早く師匠の域に到達したい。もう一歩踏み込んだ世界に進みたい。

― お酒は?

 

あんまり飲まないです。生ビール中ジョッキ1杯くらい。

 

― 意外です!もっと、たくさんお飲みになる方かと。

 

嫌いじゃないんですよ。でも、すぐ酔ってしまうんです。僕は。

 

― 毎回、釣った魚をさばいて、お酒の肴にしているものだとてっきり・・・

 

さばいて食べたいんですけどね本当は。でも、さばけないので、今はほとんどキャッチ&リリースです。最近は三宅島に良く行っています。夜22:30に乗船して、早朝に到着して釣り三昧(笑)。

 

― 現在のようにハマったのは、いつ頃からですか?

 

二つ目に上がってからですね。最初は志ん八さん(※)を誘って行きました。彼はやったことない人だったんですが、志ん八さんとはたくさん行きました。そのうち、ある兄さんが(釣りに)誘ってくださるようになりまして。で、初めて三宅島に行ったときにイシダイを釣っちゃったんですよ。ビギナーズラックですね。もううれしくてうれしくて。それで、もう(笑)。はまりましたね。刺身にして食べたんです。最高でした。42~3センチです。この写真です。

 これくらい大きくないと、イシダイとは言えませんからね。今まで食べた刺身の中で一番おいしかったです。

 

※ 古今亭志ん八:古典も新作もこなす「TEN(※)」のメンバー。平成29年秋の真打昇進が決定。

※ TEN:落語協会で2003年楽屋入りした同期10人組の落語ユニット。古今亭文菊、柳家ろべえ、三遊亭時松、鈴々舎馬るこ、桂三木男、柳亭こみち、古今亭志ん八、古今亭駒次、柳家さん若、柳家花ん謝。

古典の世界観を、古典のままでお届けしたい。それがポリシーでもあります。

 

― どういう噺家になりたいですか?

 

落語をあまり聞いたことがない人が、例えば弟子入りする前のあたしのような人が「どういう人が面白いの?」って聞いたときに、名前が挙がってくるくらいの噺家になりたいですね。見に来てくださったお客様が、お帰りの際に「いい噺を聞いた」とか「いい時間をありがとう」とか、そんな風に言われる噺家になりたいです。

 

― 好きな言葉、色紙に決まってしたためる言葉などありますか

 

色紙には、その日、自分がやった落語の中からワンフレーズをもらって書くのが常です。好きな言葉は『一言芳音恩(いちごんほうおん)』。「芳恩」というのは人から受けた親切や恩義のことです。ちょっと声をかけてもらったことを忘れずに感謝する、ってことです。知り合いに書道が得意な人がいて、その人に教えてもらったんです。

 

― 趣味。釣り以外では音楽と書いてあります。好きな音楽は?

 

ソウルミュージック、ブルース、レゲエですね。以前は、バンドを組んでいました。楽器ができないので(笑)、ボーカルをやってました。ビートルズよりは、ストーンズ派です。

 

― 古典一筋ですか?新作をやろうとは思わないのですか?

 

新作をやろうとは思わないですね。もしやるなら、自分で作りたいと思います。でも自分には作る力はないですから。よって、古典一筋。まだまだ覚えたい古典がいっぱいありますし。

 

― さん若さんの場合、古典でもアレンジを加えるなどは、あまりしていないように感じます。

 

アレンジというほどアレンジはしませんね。たまに、一言足したりとか、その程度です。それも意図的なものではなく、稽古したり、高座で何度も話していく中での、偶然の産物です。意図して変えようとは思っていません。現代的な要素を入れたりとかもないですね。

 

― なぜですか

 

お客様が噺に入り込んできている、没入してきている中で、現代性を入れてしまうと、世界がすっと江戸から現代に戻ってしまう気がするんです。そんなのは僕としては嫌なんで。古典の世界観を、古典のままでお届けしたい。それがポリシーでもありますね。

 

― 今後の予定、ビジョンなどありましたら

 

何か仕掛けたいというコトよりも、稽古の質を上げたいですね。今はまだ、覚えたものをただやってるだけ、お客様に対して、頭がまっ白にならないように、という。そこから、もう一段ステップアップしたい。もう一歩踏み込んだ世界に進みたい。噺を掘り下げるというか。台詞回しなり、いいかたなり。「お前は、いまこういう感じで喋ってるけど、こうだ」と師匠が見せてくれる。まだ、その域には達していませんせんから。早く師匠の域に到達したい。それだけに、もっと稽古の質、稽古の仕方なりを、もう少し上げていかないとと思っています。

 

あと高座自体で言えば、もっとゆっくりやりたいというか、落ち着いてといいますか。噺を落ち着かせたい。ドタバタすることが多いので。そこも(反省点として)考えます。さっき申し上げた最近好きな噺「猫の災難」なんてのも、事実難しい噺ですし。ほぼ、独り言のような世界ですから。あれを、ゆっくり、のんびり、世界をつくりながらやりたいもんですね。

 

― 聞き手の我々としても、さん喬師匠の凄さをますます感じます

 

すごいですよ。鋭いですし。師匠の前では、なんにも誤魔化せません。

 

― 最後に、それを読んでくれている方々へメッセージをお願いします

 

落語界全体の話でもいいですか?どうしても、真打の方の落語会を見に行く人が多いと思いますが、二つ目の会にも、ぜひもっともっと足を運んでいただければと思います。今や毎日のように落語会がありますから。そしてできれば、落語を見たことがない人が周りにいたら、どんどん連れてきてください。「敷居が高い」って思うお客様も多いようなのですが、そんなことありませんから。もっと身近で気軽なのが落語です。

 

とぼけた風味の落語求道者。不器用(本人談)?なのに、どうしてここまで面白い?

 

くがらく史上、最も照れ屋で、最も表情豊かな落語家だった、柳家さん若さん。照れは自分を客観視する能力でもあります。自分に過剰に酔うことがない。さん若さんはそれをお持ちです。その点も大いに魅力的。「お前は、『どうだ、俺は(落語)上手いだろう!』という感じで落語をやっていないのがいい」と、その本質を見事見抜いた喬太郎師匠にも感服します。外連味がない、嫌みがない高座。

 

今は落語家ブームだとか、二つ目若手ブーム、イケメン落語家ブームだとか言われています。さん若さんは、お世辞にもイケメン落語家ではないし、テレビ映えする派手さはないけれども、その魅力やポテンシャルは、どの二つ目落語家さんにも引けを取らないと思っています。変化球でも、ブームでもない、いわばストロングタイプの、古典落語の求道者。

 

「マクラが苦手で、照れ屋で、不器用(本人談)」。なのに、どうしてここまで面白い?

 

それは、「落語本編で勝負するのだ、自分にはそれしかできないのだ」と己を見極めた、不器用な人だけに与えられた、まっすぐな笑いの破壊力をお持ちだからではないでしょうか。

 

特段のフラ(※)を持つわけでもない。小器用でもない。ただ、まっすぐなだけの力強さが、さん若さんにはあります。

 

※ フラ:その芸人独特の何とも言えない可笑しさ・面白みのこと。その芸人さんが纏っている目に見えない面白い空気感。真似したり学んで身に付くものではない、ある意味、天賦の才。

 

今秋、紫綬褒章を受章された五街道雲助師匠は受賞に際し、

 

「噺だけが動いて高座の自分が消える。それが私が演じる境地です」

 

と語っていらっしゃいました。同じように古典を追求するさん若さんの見つめる先の境地やいかに。

 

お忙しいところ、長々とたくさんの質問に答えて頂き、本当にありがとうございました。さん若さんの来年、再来年を、これまで以上に楽しみにしています。

 

※ 五街道雲助:さん若さんの師匠・さん喬師と同様、現在の落語界を牽引する実力派噺家のひとり。落語会江戸落語の本道を追い求め、落語の“粋”と“味わい”を存分に堪能できる。

(インタビュー&撮影:くがらく編集部 2016年10月吉日)

さん若さんの魅力。古典の世界づくりに徹し、自分に過剰に酔うことがない。外連味がない、嫌みがない高座。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。さん若さんの素顔、そして本音。

 

柳家さん若 独占インタビュー(1)

柳家さん若 独占インタビュー(2)

柳家さん若 独占インタビュー(3)

 

 

プレゼントあり!「くがらクイズ」 さん若篇