三遊亭歌太郎 独占インタビュー(3)

常に“ちゃんとしてなきゃいけない”とは思っています

― 落研にも入部した歌太郎さん。子供の頃から人を笑わせたりするのが好きだったとか、そういう傾向はあったんですか?才能というかセンスというか。

 

全くないと思います。つまんない人間です。どっちかと言うと冷めた目で見てるタイプですね。テレビのバラエティ番組などもすごく冷めた目で見ちゃうんです。

 

― 例えば、学芸会で主役だったとか…

 

ないないない(笑)。とにかく目立ちたくないんです。だから学芸会の時はスポットライト(照明係)やってました。舞台の上の方かなんかにいて。

 

― そんな目立ちたくなかった少年が、現在では目立ってなんぼの商売をしているわけですよね

 

僕は芸名(三遊亭歌太郎)として舞台に出た時は喋れますけど、本名(磯部成伸~いそべまさのぶ)として出たら喋れないですよ。本当に苦手です。別人格ですね。スイッチがオンになる、オフになる、そんな感じです。

 

― 別人格になった歌太郎さんの持ち味は?特徴、他の噺家にはない…あまり考えたことはないですか?

 

他の芸人と比べてみたことがないので…。なんだろうなあ…割と女性を演じたりするのは好きですけどね。常に“ちゃんとしてなきゃいけない”とは思っています。私の場合、あまり(噺家としての)キャラクターを優先し過ぎちゃうと良くないような気がしてますね。僕自身のキャラクターがあまり強くないので出て来る登場人物のキャラクターを強めていくというか。ただし、それも強め過ぎると味付けが濃くなっちゃうんで、その辺を上手いこと考えながら、バランスを取りながらやれたらなあと思いますけどね。そんなところ目指してはいます。

 

― (五街道)雲助師匠も同じようなこと(※)を言っていました。

 

そうですね。だから己(おのれ)が出過ぎちゃうと邪魔になるんですよね。己のキャラクターが強い方が売れやすいとは思います。そういうわかりやすさってのがあるから、お客様がつくのかなって思います。でも、僕はそういうタイプじゃないので。長い目で考えてます。

 

※ 2016年秋、紫綬褒章を受章された五街道雲助師匠は受賞に際し、「噺だけが動いて高座の自分が消える。それが私が演じる境地です」と語っていらっしゃいました。

 

 

― ネタ数、お持ちのものは?

 

覚えて演ったのは100ちょっとですかね。100超えたくらいの感じでしょうね。

 

― 多い方ではないでしょうか

 

そんなことないんじゃないですか。僕は前座の時に全然持ってなかった方なので。前座から二つ目になる時に(ネタ数が)13席位でしたから。そこから8年、9年くらいですかね。みんなそんなもんだと思います。

 

― 一番最初に覚えた噺はなんですか?

 

「子ほめ(※)」です。

 

※ 子ほめ:仲間に赤ん坊が生まれたので、お祝いに行って、子供を褒めちぎって喜ばせて、ただ酒にありつこうとする男の噺。代表的な前座噺。

 

―師匠から?

 

はい

 

― 圓歌一門のルールですか?

 

そういうわけじゃないですけど。うちの師匠も「子ほめ」を一番初めに教わったみたいです。うちの師匠が前に言ってたのは「(子ほめは)基本がちゃんとしてて、笑わせることのできる噺」だと。お客さんが笑ってくれるという、その楽しさを知ってほしいと思ったみたいです。

 

好きすぎる噺って、自分の主観が強過ぎてうけないんですよ。

 

― 100のネタのうち、もっとも好きなお噺は?

 

いろんな要素が入ってる噺が好きですね。それでいうと「文七(元結)」ですかね。「居残り(佐平次)」とか(※)。「文七」なんていうのは本当にいろんな要素が入っている噺です。笑わせる事もできるし、ほろっとさせることもできるし、個人的には落語の究極というか、そんな気がするんです。その分、難しいんですよね。好きな噺、噺が好き過ぎると却って上手くいかないと思うんですよね。この噺が好きだからって言って、教わっていざやってみると自分の主観が強過ぎてうけないんですよ。

 

だからむしろ自分の嫌いな噺の方が、お客様が笑ってくれるっていうのはありますね。不思議なもんです。あと、一度うけたからって同じ噺をずっとやっていると、どんどんうけなくなっていくんですよね。“噺との距離感”が近くなると、どんどんうけなくなる。なので、そうなったときは、敢えて、しばらくその噺をやらないようにします。他の噺を演って、また忘れた頃に、その噺やる、みたいな。そこらへんは意識します。噺を戻すと、一番好きなのはやはり「文七」。あと、最近演ってる(高座に掛けているネタ)のは「片棒」が多いかな。

 

※ 「文七元結」:ぶんしち もっとい。登場人物が多い大ネタ。三遊亭圓朝の創作。腕はいいが博打好きで借金のある左官の長兵衛。長兵衛の娘で、家計を助けるため(お金をこしらえるため)自ら身売りするお久。お金を失くし身投げしようとする男・文七らが織りなす一大人情噺。

※ 「居残り佐平次」:いのこりさへいじ。仲間の兄貴分・佐平次が品川遊廓でただで遊ばせてくれるという。蒲団部屋に籠城して居残りを決め込んだ佐平次だが・・・。古典の大ネタ。映画「幕末太陽傳」の原作でもあります。

 

― 嫌いな噺は?

 

「井戸の茶碗(※)」が嫌いです。大っ嫌いです。いずれ多分やると思いますけど。今は持ってないんですけど嫌いです。良い人しか出てこないのが、なんかイヤなんです(笑)。

 

※ 「井戸の茶碗」:人呼んで「正直清兵衛」、くず屋の清兵衛が、とある裏長屋で、千代田卜斎(ちよだ・ぼくさい)と名乗る浪人から、煤けた仏像を二百文で買ったところから物語が動き出し・・・。

 

― 思い入れのある噺は?

 

「手紙無筆(※)」です。志ん橋師匠に三遍稽古で寝坊した時、稽古つけてもらったのが「手紙無筆」なんで(苦笑)。三遍稽古って、基本的に録音できないんです。目の前で3回喋っていただいて、それを何度も繰り返すんです。なので、そうですね、14~15回(志ん橋師匠のところに)行ったんじゃないですかね。この間、久しぶりに演りましたけど、偉いもんで覚えてるんですよね(笑)。脳みそにちゃんと刻み込まれてる。また、三遍稽古という形で教わった噺はこれだけ。そういう意味でも思い入れはあります。

 

※ 「手紙無筆」:知ったかぶり、物知り顔の甚兵衛さんの所へ、知り合いの男がやって来て手紙を読んでくれと頼む。ところが、どちらも字の読み書きができない人間で・・・。

 

― 噺を覚えるのは早いほうですか?

 

 

苦手ですね。ノートに書き起こしてそれ読んで。結局、私は一言一句覚えられないんです。30分程度の噺は3日あれば覚えられんですけど、ただざっくりなんですよね。この言い回しが自分には合わないというのがあるので、勝手に自然と変えちゃったりとか。私の場合、この言葉の並びは言い辛いからこういう風に変えちゃおうとか、そういうことやっちゃってるんで。言い辛い言葉の並びも個人個人で違うんですよ。(噺家の)中には、きっちり覚えてる人もいます、一言一句。そういう人はすごいなと思いますね。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。歌太郎さんの素顔、そして本音。

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(1) 

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(2)

 

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(4)

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(5)

 

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