三遊亭歌太郎 独占インタビュー(4)

ギャグと“くすぐり”って違うんですよね。

― 自然なアレンジのほかに、“歌太郎節”にしているものってありますか?

 

ありますよ。覚えたあとに変えるんですけど。ギャグと“くすぐり”って違うんですよね。“くすぐり”っていうのは、あくまで(お客様がこちょこちょと)くすぐられる感じなんですよね。ギャグっていうのは、一般的に言われるうギャグですよね。私はくすぐりを入れたい派です。くすぐりってのは何かしらの仕込みがあるはずなんですよね。仕込みがあって、それをちょっといじって笑いにつなげるみたいな。そういう笑わせ方は好き。でも笑わせるためにギャグを入れ込むとか、そういうのは好きじゃないので。

 

― 新作はいかがなんですか?

 

他の人の作った噺は2つくらい演りました。歌舞伎の話を自分で落語にしたのはひとつあります。「権三と助十(ごんざとすけじゅう)」を落語にしたんですよ。自分で落語にした時は「さる政談」って題名にしました。そもそもがお芝居なので登場人物が多い。それを上手いこと削りながら作っていくんです。けど、まだ完成はしてないので。もっと磨いて、落語って感じに仕上げていきたいなと思っています。

 

※ 「権三と助十」:駕籠舁(かごかき)の権三(ごんざ)と助十(すけじゅう)が登場人物、岡本綺堂作の芝居「権三と助十」。それを元にした歌太郎さんによる新作落語。

 

― 最近自分で演ってて楽しい噺は?

 

「片棒(※)」と「電報違い(※)」が最近多いかな。「片棒」は朝也兄さん(※)に教わったんです。「片棒」は自分が真打になった時、寄席でできるからってことなんです。教わったのは20分ちょっとだったんですけど、詰めて12分未満で収めてます。枕ふって噺やってお客様を満足させられるというと、それくらいの時間。先々のことをみすえて出来ているのは「片棒」。「電報違い」はあまり寄席向きじゃないですね。やったとしてもトリでしかできない感じなので。

 

※ 「片棒」:赤螺屋(あかにしや)ケチ兵衛という男が自分の身代を、三人の息子の誰かに譲ろうと考え、それぞれの話を聞くことにした。ところが・・・。

※ 「電報違い」:初代 三遊亭圓歌作の新作落語。まだ電話がない時代、名古屋から東京に打った電報が誤解を招き、騒動を巻き起こす噺。

春風亭朝也:平成29年3月下席より真打に。春風亭朝也 改メ 春風亭三朝(さんちょう)に。

 

― 師匠以外で影響を受けた噺家さんはいますか。

 

言われて心に響く言葉を言ってくれた方は志ん輔師匠(※)とか、円蔵師匠(※)です。志ん輔師匠に言われたのは「面倒くさいことをちゃんとやっておくと、しくじらないよ」と。面倒くさいと思ったことほど、ちゃんとやれと。あぁ、なるほどと思いましたね。

 

円蔵師匠からの言葉は「お前な、師匠一人をいい心持ちにさせられないのに、客100人200人を良い心持ちにはさせられないぞ」です。これはさっきお話しした破門事件のあと、謹慎を解かれた後にいただいた言葉です。

 

円蔵師匠からはもうひとつ。前座時分、舞台の袖から真打の高座を聴いてたときのこと。そしたら円蔵師匠が「お前何やってんだ?」「はい。勉強させていただいてます」「お前なあ、自分より上手い人の落語聴いてんじゃないよ。下手な奴のを聞け」って言われて。確かに、そうなんですよね。自分より上手い人ってのはレベルが違い過ぎて何がすごいのかわからないんですよ。でも、自分より下手な人のを聴いてると、もう自然と「ここがだめ、ここがだめ」って見えるんです。けど、そのダメな部分全部自分に当てはまるという(苦笑)恐ろしいことに気づかされて。ありがたい一言でした。

 

古今亭志ん輔:三代目 古今亭志ん朝の弟子。「たまごの会」を開催したり、神田須田町に「神田連雀亭」を立ち上げるなど若手育成にも熱心。

橘家円蔵:八代目 圓蔵。前名は五代目 月の家圓鏡(つきのや えんきょう)。通称、『平井の師匠』。2015年没。

 

― ところで、大田区はどこにお住まいだったんですか?

 

大森です。まだ実家があります。前座の時は大森の実家に暮らしてました。うちの師匠が独り暮らししろっていうので引っ越しして今は大田区を離れちゃいましたけど。

 

― 大田区大森時代の思い出話はありますか?

 

小学校の時とか、ろくなことしてないです(笑)。近所の駄菓子屋行くと花火とか売ってましたから、ロケット花火とか煙玉かんしゃく玉とか。そういうの買ってきて公園で遊んだりとか。

 

― 池上線は乗ってましたか?

 

あまり乗らなかったですね。蒲田で水泳を習っていたので、蒲田まではしょっちゅう行ってました。マルエツの上です。

 

― ご両親は高座を頻繁にご覧になっていますか?

 

よく観にきてますよ。大森の会の時とかは。

 

― 久が原でやったら来てくれますか?

 

来なくていいんじゃないですか?(笑)。来てると人情噺とかやりにくくなりますからね。親に見られているのは嫌ですね。文化の森で「おおもり落語会」というのをやってるんですけど、毎回いるんですよね(笑)。やりにくいので客席真っ暗にしましたね。どこにいるかわからない状態で。

 

― ご兄弟は?

 

上に2人います。兄・姉・私です。11歳と9歳離れてます。

 

― 趣味が、ものすごくバラエティに富んでます。※【趣味】水泳、文房具屋巡り、筆ペン、宇宙、木刀、包丁研ぎ

 

宇宙はもういいです。世界が広がり過ぎてわからないんです(笑)。水泳は子どもの頃、7年位やってましたんで。今はたまに泳ぐくらいですけど。文房具屋は時間をつなぐときに、うろうろしてたりしますね。

 

― 文房具好きですか?

 

好きですね。正確には文房具というか、鳩居堂などに置いてある和紙とか、筆ペンとか。そういうのにこだわります。木刀は運動しようと思って木刀を通販で買ったんですよ。それをたまに公園で振り回したりしてますよ。部活じゃないですけど、中学高校男子校で、剣道やってて。子どもの頃から長い物振り回すのは好きです(笑)。包丁は研ぐのが好きなもので。

 

― ご自身で料理されたりするからですか?

 

料理ってほどの料理じゃないですけどね。刺身包丁、出刃包丁の安いのがあるんですけど、たまに研いでますね。切れなくなった包丁が切れるようになるときは快感です。

 

 

上手さが面白さで消えるのが一番いいんじゃないんですかね。上手いとか、そんなの考えてる状態にお客さんをさせたくない。

 

― 歌太郎さんが考える理想の噺家とは?どんな噺家になりたいですか?

 

上手さが面白さで消えるのが一番いいんじゃないんですかね。上手いとか、そんなの考えてる状態にお客さんをさせたくないなと思いますね。「上手い。けど、つまんないね」じゃなくて、「あ~面白かったねえ」というのが、お客さんの口から真っ先に出るといいですね。でも、そのためには上手くなきゃできないんですけどね。面白くないから上手いって褒められるのかも知れませんし。きっと、面白かったら、上手いなんて言われないと思うんですよ。総合的に「面白かったね」のほうが勝つと思うので。難しいですけどね。

 

― そうなるためにはどうしよう、どうあるべきと思いますか?

 

やっぱ上手くなんなきゃいけないですよね。あとは人間的な面白さ。これも必要なのかもしれないですね。もう、とにかく高い壁ですけどね。だからいろんな経験が必要になるのかなという気はします。それが噺に活きてくるというのはあると思うので、だから10年前に覚えた噺で、そんときはできなかった噺でも、今やったらできるっていうのもありますし。また、それが10年後には変わるでしょうし、それは経験があるからこそそうなるんでしょうし。

 

― これから考えている、こういうこと仕掛けたい、こういう会をしたいっていうのはありますか? 

 

落語を知らない人に知ってもらいたいなというのはありますね。そのためにも地方でやりたいんですよね。来月、札幌でもやるんです。完全に自主興行です。なんの伝手もないので、結局私が札幌で美味いもの食べたいってのがあるんですけど(笑)。そうやって少しずつ広げられたらなあと思うんですけどね。恐怖の方がでかいですけどね。人が来る・来ないは、回数を重ねていけば増えてくると思うので。そこは自分を信じるしかないですね。とりあえず動いてみよう!と考えてます。

 

それと、今噺を新たに覚えるよりも、今持ってる噺で使い物になってない噺というか、蔵に眠っている噺があるので、それを使えるような形にしたいなと思っています。新しいネタも増やすんですけど、それ以上に使ってないネタを使えるように、自分が真打になった時に寄席の出番に呼んでもらえる・もらった時にできる噺に仕上げたい、というのを今年来年でしたいな。と思います。

 

― 順当にいくとあと何年くらいで真打ですか?

 

とりあえず今年決まってる人たちが上がって12番目になるんです。だから来年はないと思います。再来年の春か秋くらいじゃないですかね。

 

― 歌太郎さんが考える“一流の落語家”と、そうじゃない人の差はなんですか?

 

一流とは、お客様の期待が大きいってのはあると思うんですよね。だから出て来た時のお客さんの喜び以上に、落語が終わった時の拍手が大きい。それが一流の噺家なのかもしれないですね。迎え手(むかえで)より、送り手(おくりで)の方が大きいという。迎え手が盛大だが、送り手はさらに盛大、みたいな、そういうのが一流かもしれないですね。

 

― 「まってました!」から始まって・・・

 

「最高でした!」になるんでしょうね。以前、一之輔兄さん(※)の披露目興行を手伝っていたときのことです。その日はどなたかの代演で(柳家)小三治師匠(※)が出たんですよ。お客さんも知らされてなくて、鈴本の表の、木の顔付けのあるじゃないですか。あそこに小三治師匠の名前がなかったんですよね。寄席が始まって、前座さんが高座返しをして湯呑を出して、めくりを「小三治」とした瞬間にお客さんが初めて知って、会場全体が湧いたんです。「ウォ~~ッ」となったんですよ。そういうのが一流なのかなって気はします。

 

春風亭一之輔:2004年、先輩の噺家を21人抜きして真打ちに昇進。NHK新人演芸大賞落語部門大賞受賞など数々を受賞。

柳家小三治:十代目 柳家小三治(こさんじ)。一般社団法人落語協会顧問。2014年重要無形文化財保持者(人間国宝)認定。

 

― 二つ目と真打の差は?

 

真打になったことがないのでわからないですけど、ある兄(あに)さんが言っていたのは「二つ目はね、いくら真面目にやっても木刀なんだよ。真打ってのは真剣」って。多分なってみるとそういう世界が見えてくると思うんですけど。いくら真打に勝とうとしたところで、あくまで僕は二つ目なのでお客様の認識も違うと思うんですよね。まず前座の頃と二つ目でもお客様の認識が違いますから。前座の時はおもちゃの、ビニールの刀じゃないですかね。今ようやく木刀になりました。この後、真剣っていう状況になると思うんですけどね。

 

― 真打になったら趣味も(木刀から)「真剣」に変えてください

 

まあ、捕まるでしょうね(笑)。真剣をどこでどう使うかでしょうね。真剣研ぎですか?包丁研ぎじゃなくて? やな趣味ですね(笑)。刀鍛冶になったほうがいいんじゃないでしょうかね。

 

 

出て来た時のお客さんの喜び以上に、落語が終わった時の拍手が大きい。それが一流の噺家なのかもしれないですね。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。歌太郎さんの素顔、そして本音。

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(1) 

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(2)

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(3)

 

三遊亭歌太郎 独占インタビュー(5)

 

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