古今亭志ん八 独占インタビュー(3)

「初代は初代。二代目のイメージはお前が作れ」

― 志ん八さんは大変器用な噺家さんと言う印象があります。ご自分では、どんな人間、どんな噺家だとお思いになりますか。

 

器用って良くないマイナス印象ですよね、それって。なんでですかね?

 

― いや、そんな(マイナスって)ことではないですよ。客層や反応に敏感、瞬時に対応できる“落語家としての運動能力”が高いとか、もちろん古典も新作も両方できる落語家というプラスな印象が、ということだと思いますよ。お客さんの心を掴むのが上手いというか、スマートと言うか。それに加えて、イラストも描くし、釣りもするし、テレビにも出るし、という器用さ、マルチタレントな感じが、そのようなプラスの印象になるのではないでしょうか。

 

そうですか。ありがたいことなんですね。自分では良くわかりませんね。

 

― 新作落語をするに際して、志ん五師匠は何かおっしゃっていましたか。

 

志ん五は(三遊亭)円丈(※)師匠と懇意にさせて頂いてたんですね。その縁で、落語協会で新作落語台本・脚本募集ってやってるじゃないですか、それの副委員長を志ん五はやってたんです。ですので、新作(落語)にはもともと理解があったんです。かつて、円丈師匠がジーパンで落語をやるって会があり、恐らく渋谷ジァンジァンで毎月開催されていた円丈師匠主催の新作落語の会『実験落語』かなぁ。そこに「出てくれ、スーツで出てくれ、スーツ着て落語をやってくれ」とお願いされた経験があります。そんときは「えぇ…。わかりました。1回だけですよ、兄さん」って出演したことがあります。

 

※ 三遊亭円丈:えんじょう。創作落語の中興の祖であり、創作落語の革命家。自由な発想で新作落語の世界に旋風を巻き起こし、若手落語家たちにも多大なる影響を与え続けている。

 

実は。自分で作った新作落語を初めて高座に掛けるという会に、僕は(志ん五)師匠をゲストに呼んでるんです。そしたら絶対、袖で聞いてくれると思って。

 

― 初の新作を聞いた師匠の反応は?

 

ノーコメントでした(苦笑)。苦虫を噛み潰すような顔してました。ただ、僕の次に高座に上がった師匠は「若いうちにいろいろやるのは引き出しを増やすためにも良いこと。みなさんも、どうか付き合ってやってください」ってマクラで言ってくれましてね。うれしかったですね。

 

― そんときのネタは?まだ残ってます(いまだに演ってます)か?

 

いや、もう残ってないですね。セメントで固めて海の深いところに沈めました(笑)

 

― 同様(新作落語をするに際して)に、志ん橋師匠は何かおっしゃっていますか。

 

志ん橋は「どんどんやれ!」と後押ししてくれます。実は、秋に控えている真打披露興行も「全部、新作でやったっていいぞー」って師匠の方から(笑)。さすがにそれは無理ですけどね。「師匠、僕の新作ネタはだいたい10分なので、寄席のトリネタ(持ち時間が約20分)では無理です」って。そう言ったら、「じゃぁ、わからないように、新作2本をつなげちゃえー!」って。そんなの無理ですからね(笑)。そのくらい応援してくれてます。

― 真打昇進直前。いまの心境は?

― 真打昇進直前。いまの心境は?

 

うれしいです。楽しみです。待ちに待ったというほど待ってはいませんけどね。反面、怖いですよね。例えば小三治師匠とか、志ん輔師匠とか、白酒師匠といった実力のある人気の真打と、(真打という)位だけは同じになる訳ですから。二つ目の上の方で無責任にぱーぱー喋ってる方が楽っちゃぁ楽ですけどね。真打になるってことは、それだけの責任を追うってことでもありますから。二つ目と真打の差、境目とは覚悟、ですかね。責任感の差。

 

※ 柳家小三治:重要無形文化財保持者に認定された噺家。人間国宝。

※ 古今亭志ん輔:3代目古今亭志ん朝の弟子。「たまごの会」を開催したり、神田須田町に「神田連雀亭」を立ち上げるなど若手育成にも熱心。

※ 桃月庵白酒:毒のあるマクラ、異常に良い声、巧みな話芸。チケットがとても入手しにくい、現代を代表する超人気落語家のひとり。

 

― 「志ん五」と言う名前を継ぐことに関して。

 

“師匠が弟子に付けた名前が一番ぴったり。一番いい”ってのが僕の考えです。名前を付けてもらった弟子は「えぇ?もっと他の名前がいいのに」と思うかもしれないけれど、でも、こういう世界ですから。“師匠が弟子に付けた名前が一番ぴったり。一番いい”が僕の持論。なので、志ん橋が付けてくれた名前を名乗ろうと決めてました。(志ん橋)師匠は真打に上がるときには名前を替えろというのが主義の方なので。

 

そしたら、まず師匠から「志ん五兄さんの名前(を継ぐこと)を考えたっていいぞ」っておっしゃってくれたんです。「真打昇進が決まったぞ!」の連絡の、その電話口で。

 

その後、志ん五のおかみさんのところに一緒に挨拶に行ってくれて。「こいつに、兄さんの名前を継がそうと思うんですが、いいでしょうか」って。一緒に頭を下げてくれて。

 

おかみさんは即OKでしたが「ただ、兄弟子の志ん陽志ん好(※)が、将来、志ん五を継ぎたいと思ってるかもしれない。それだったら無理だから、そこを確かめてからにして」と。で、確認に行ったところ、兄さん二人とも「お前が継ぎたいのなら、いいよ」と言ってくださって。それからは、どんどん話が進んで。そんな状況です。ありがたい話です。

 

※ 古今亭志ん陽(しんよう)。志ん八さんの兄弟子。もともと3代目古今亭志ん朝に入門。2001年、師匠の志ん朝死去により、志ん朝の兄弟子・古今亭志ん五門下に移籍。その後、志ん五師匠死去により、志ん朝の弟弟子・六代目古今亭志ん橋門下に移籍。

※ 五代目古今亭志ん好(しんこう)。古今亭志ん五に入門した、志ん八さんの兄弟子。志ん陽師匠と同じく、志ん五師匠の死去により、志ん朝の弟弟子・六代目古今亭志ん橋門下に移籍。

 

― なるほど

 

それでも僕の中では、まだ初代の志ん五のファンがいますから、まだ七回忌ですし。不安が大きかったんですが、そんなときも志ん橋が「初代は初代。二代目のイメージはお前が作れ」って背中を押してくれました。

 

 

― 新作のストックは、いまどのくらいお持ちですか。

 

だいぶネタおろししてしまったのでストックは4~5本ですかね。

 

― どんなときに新作ネタを思いつくのですか? 

 

いま(笑)。こんな時(笑)。いまインタビューを受けてますよね。僕の目の前いるお二人が、一人はまともな人、もう一人がちょっと変な人だったら、インタビュー進まないだろうなぁ。とか思っちゃいます。

 

― 以前、「シブラク」の枕でお話になっていた、跳び箱(8段)の上で落語をやるという件が忘れられません。大爆笑でした。あれは本当ですか?

 

本当です。で、あれには後日談がありまして。あの仕事を僕に紹介してくれた方が、あのときのシブラクにいらしてたんですよ!で、僕のマクラを聞いて「紹介した手前、穴があったら入りたい気持ちでいっぱいです。つきましては、私の地元●●で落語会をやってください」」ってメールをくれました。ありがたいですよね。だから僕、こう返信しました。「こちらこそネタにさせていただいてありがとうございます。ぜひ、落語会やりましょう。跳び箱の上で」って(笑)。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。志ん八さんの素顔、そして本音。

古今亭志ん八 独占インタビュー(1)

古今亭志ん八 独占インタビュー(2)

 

古今亭志ん八 独占インタビュー(4)

古今亭志ん八 独占インタビュー(5) 

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