古今亭志ん八 独占インタビュー(4)

― 志ん八さんの持ち味、特長。ご自身ではなんだと感じていますか。

 

なーんでしょうねえ。うーん、なんでしょう。なんにもないと思います、僕には、そういうの。何かないですかね?あるといいなぁ。そういう意味でも(昇進してからの自分の将来が)楽しみですね(笑)。一つ言えるのは、「僕は人に恵まれてるなぁ」とは思いますね。めちゃくちゃ恵まれてる。その都度その都度、必要な時に必要な人たちが現れるという、そういうことが良くあるんですよ。

 

― ご自分で引き寄せてるんですよ。

 

どうなんでしょうね、でもほんと、運が良いと思います。以前、本で読んだんですが、松下幸之助さんの話で。「どういう人を面接で採用するのですか?」って聞かれて「運が良さそうな人」って答えてました。それ読んでね、僕は松下電器(現パナソニック)に入社できたのにな!って思いましたよ(笑)

 

― いつも笑顔の志ん八さん。落ち込むことはないのですか?

 

ありますよ。ありますけどね、長く落ち込めないんですよね。1日くらいしか(笑)。長くて1日。1日経つと忘れちゃう(笑)。進歩がないのかもしれないんですけど(苦笑)。鈍感なんですかね。

 

― 「鈍感力」、いいじゃないですか。必要な才覚ですよ。

 

とにかく、くよくよしないように努めてます。正確には“努めてました昔は”ですが。いまはもう一周回ってくよくよできない性格が出来上がっちゃった(笑)。

 

― 素晴らしい。打たれ強いというか。ハートが強い、強心臓なんて表現もありますしね。

 

― 落語家人生で大事にしていることは?

 

大事にしてることですか…。師匠の受け売りですけど(寄席や大勢の落語家が出る落語会での)ポジション、出順(出る順番。香盤)を大事にしています。

 

特に寄席はトリをとる師匠(トリネタ)に向かっての前座から始まる一連のチームワークですからね。その流れや雰囲気を壊さずにつないでいく。そこが好きですし、しっかり自分の与えられた出順(高座)を務めたいと思っています。

 

お客様に負担をかけないようにとも思っています。僕の新作落語が短めなのは、そんなわけのわからない噺をですね、30分もやる勇気がないのでね。お客さん、イヤでしょう。僕の新作を30分も聞かせられるのは(笑)。それに10分サイズだと寄席でもかけられるようになるのでね。

 

あとはそうですね。例えば「私たちの会では、このネタをやって欲しいんですけど。持ってますか?」というオファーが来たとするじゃないですか。

 

― はい

 

持ってなかったら、その会までに覚えますね。がんばって、上げてもらうまで持って行きます。できる限り、お客さんのリクエストには応えたいと思っているので。

 

― すごいですね

 

いえいえ。だってね、芸人ですから。お客さんの求めることには、リクエストには、できるだけノーと言いたくないじゃないですか。イエスと言いたいですもん。

 

 

― お持ちのネタ数100、新作は70とあります。真打後は、古典・新作、どちらの比重を高めていきたい。など、お考えはありますか。

 

新作と古典どちらも楽しんでやりたいと思ってます。

 

 

― 好きな噺ってありますか?

 

人を騙す噺が好きですね。「居残り(佐平次)(※)」とか、「王子の狐(※)」とか、「付き馬(※)」とか。きれいに騙されたら気持ちいいでしょ。そこら辺がとても落語っぽいなと。騙しているのに嫌な気持ちにならないでしょ?そうじゃありません?スマートというか、綺麗に騙す。そういうところも落語って恰好良いなっって思うんです。

 

※ 「居残り佐平次」:いのこりさへいじ。仲間の兄貴分・佐平次が品川遊廓でただで遊ばせてくれるという。蒲団部屋に籠城して居残りを決め込んだ佐平次だが・・・。古典の大ネタ。映画「幕末太陽傳」の原作でもあります。

※ 「王子の狐」:おうじのきつね。人を化かすと言われる狐が、逆に人に化かされてしまう顛末を描いた古典落語。

※ 「付き馬」:つきうま。付き馬とは遊廓で働く男性店員のこと。料金不足を徴収するために客の家まで付いていくのが仕事。そんな付き馬が吉原でドンチャン騒ぎをした男に連れていかれて…

 

 

「このストーリーに沿った形の創作落語を作ってください」って言われて

― 「出目金」という新作について

 

あれは、映画『の・ようなもの の ようなもの』(俳優の松山ケンイチさんが主演 ※)の劇中落語ネタです。そもそも、あの「出目金」という新作落語は、杉山泰一監督から脚本を渡されて「このストーリーに沿った形の創作落語を作ってください」って言われて作ったものなんです。縛り(条件)が“映画のストーリーに合ってなきゃいけない”という。なので、僕が作ったのを監督さんにチェックしていただいて、というキャッチボールを何度か繰り返して最終形に仕上げました。普段の新作(を作る)過程では味わえない体験ができたのも面白かったですね。普通は自分の主観だけで作るわけですが、そのときは他人の考えも加えて完成させたので。勉強になりました。

 

― 他の人に依頼されて作る新作もあるのですね

 

はい。最近では、ラジオ大阪さんから依頼を受けて新作落語を作りました。スポンサー企業の商品を売り出すための「CM落語」を流したい。つきましては8分のネタを4本作ってほしいというオファーがありまして。ね、面白いでしょ。ただ「この期間内に一人で4本作るのは難しい」ってことになり、4本を4人で分けて作ることにしたんです。

 

※ 映画『の・ようなもの の ようなもの』:映画『家族ゲーム』や『阿修羅のごとく』で知られる森田芳光監督の劇場デビュー作が「の・ようなもの」。落語界を描いた映画。それから35年を経て昨年2016年、俳優の松山ケンイチさんが主演(ヒロイン北川景子さん)で『の・ようなもの の ようなもの』が公開。前作の落語界の、その後を描いた作品。その劇中に登場する落語ネタが志ん八さん作の新作落語『出目金』。

 

― 4人?誰と誰ですか

 

天どん兄さん(※)、駒次、粋歌(※)、僕の4名です。恩返しじゃないですが、日ごろ世話になっている天どん兄さんと仲間に仕事を振れて、良かったなと思いました。

 

※ 三遊亭天どん:円丈師匠のお弟子さん。新作落語と古典落語の両方に取り組む。とぼけた人柄、独特の雰囲気から醸し出される天どんワールドが人気。新作落語教室の講師をするなど知性派でもある。

※ 三遊亭粋歌:新作落語を得意としている女性落語家。第二回渋谷らくご創作らくご大賞を受賞。夫は同じく落語家の柳家小八(元 柳家ろべゑ)。

 

― いろいろなお仕事のオファーがあるんですね。

 

ありがいたいことです。いつまでも仕事を頼みやすい落語家でいたいですね。可愛がられて“なんぼ”ですしね。

 

― 釣りの話を伺います。以前、くがらくにご出演いただいた、さん若(※)さんに伺ったところ。志ん八さんを釣りの世界に誘ったのは、さん若さんだとお聞きしました。その辺のお話を聞かせてください。

 

二ツ目に上がると前座仕事から解放されて自由になる訳です。うれしいなと。でも半年もすると、その暇が怖くなってくるんですよ。そりゃそうですよね、仕事してないってことですから(笑)。そんな時期に、さんちゃん(柳家さん若)に「釣りしない?」って誘われまして。彼は秋田県出身で経験者でしたので。それがきっかけです。

 

最初に行ったときに、まぁ、たくさん釣れましてね。馬鹿みたいに釣れました。ビギナーズラックかな。入れ食い状態というやつで(笑)。それで完璧にハマりました。楽しくて楽しくて。釣りにのめり込みました。

 

どれ位のめり込んだかと言いますと、その時期1年間、高座の数より釣りに行く回数の方が多かったという(苦笑)。

 

当時は、釣りのスケジュールが入ってるからって落語の仕事を断った時もありました。さすがに、その後、(はっ!)って気が付いて。(やばい…。このままでは噺家ではなくて漁師になっちゃう)と思い直しましてね。矯正の道を(笑)。先々週はお仕事のついでに主催者の方たちと、大分で鰤や真鯛を釣ってきました。

 

― 釣りと言えば、ブログやフェイスブックに時々登場する「マンタ倶楽部」(白鳥師匠、彦いち師匠、丈ニ兄さん、きく麿兄さん、彩大兄さん)について教えてください。

 

「他言無用。」が、マンタ倶楽部の掟なので、ここでは詳しいことは言えないんですよね。すみません。

 

※ 柳家さん若:柳家さん喬師匠のお弟子さんで、2014(平成26)年「第25回北とぴあ若手落語家競演会」北とぴあ大賞を受賞した筋金入りの実力派。第10回くがらく出演者

※ 三遊亭白鳥:円丈師匠のお弟子さん。過去は春風亭昇太を始めとする「SWA(創作話芸アソシエーション)」の一員。落語をあまり知らずに入門しただけに、突拍子もない独自の世界観で新作落語を幅広く展開する奇才。

※ 林家彦いち:林家木久扇師匠のお弟子さん。春風亭昇太、柳家喬太郎、三遊亭白鳥と「SWA(創作話芸アソシエーション)」を旗揚げした一員。新作落語を得意とし、空手や登山など肉体派の一面も。

※ 三遊亭丈ニ:円丈師匠のお弟子さん。バーテンダーの資格を持つ。落語は新作落語が中心。

※ 林家きく麿:林家木久扇師匠のお弟子さん。古典もやるが新作もやる。北九州の文化大使と、くまもと大好き大使でもある。

 

― そういえば、志ん八さんのウィキペディアに書いてある「小学5年生の時に、50mを5秒台で走ったことがある。」と、「小学6年生の時に学級委員長に立候補するも、自分が入れた1票しか票が集まらなく落選する。」のエピソード、本当ですか?

 

本当です。5年生の時、100mを12秒87で走ったんですよ、すごいでしょう。でも予選だったので記録には残らなかったんです。

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。志ん八さんの素顔、そして本音。

古今亭志ん八 独占インタビュー(1)

古今亭志ん八 独占インタビュー(2)

古今亭志ん八 独占インタビュー(3)

 

古今亭志ん八 独占インタビュー(5) 

プレゼントあり!「くがらクイズ」 志ん八篇