春風一刀 独占インタビュー(1)

 

くがらく編集部が、一刀さん(当時は朝太郎さん)の高座を見たのは2015年の秋でした(※)。

 

忘れもしません。2015年、人形町らくだ亭(第62回。日本橋公会堂に於いて)です。ネタは「子ほめ」でした。こんなに面白い、仕上がっている前座さんがいるのか!と驚きました。

 

腕の立つ真打の師匠たち、あるいは二つ目だけども真打級の上手い噺家さんに驚かされたことはあっても、正直、開口一番で出てきた前座さんに大笑いさせられる体験は早々あることではありません。(個人的には、そういう驚きの出会いを求めて、寄席では前座さんの高座からしっかり聞くようにしています)。第9回くがらくにご出演いただいた立川笑二さんもそうでした。

 

過去、立川笑二さんはスーパー前座と言われ、業界の話題をさらっていましたが、笑二さんとはまた一味違う大物感を感じました。それ以来、くがらくとして出演オファーをずっと狙っていました。2015と言うと、前座2年目です。なぜ、そんなに上手なのでしょうか。噺家さんの成長曲線は人それぞれでしょうが、面白い人は前座時代から面白いものなのですね。

 

今回は、そんな前座時代に出会いを果たし、(いつか二つ目になったら、くがらくにお呼びしたい)と思い続けていた、春風一刀さんの回です。

 

注)取材日:2017年10月16日(月)。取材時点では、まだ“朝太郎”さんでした。

 

僕はあれですよ。初高座、絶句でしたから(爆笑)

実は僕、たまにネットでエゴサーチ(※)してまして、当時、三浦さんのブログを読んでました。褒めて下さって、ありがとうございます。(※)

 

― こちらこそ、こうしてお会いできて光栄です。あの日、お世辞抜きに、本当に驚いたんです(※)

 

ありがとうございます。ただ、まだ、当たり外れが大きい(面白い高座とそうでない高座の差がある)です。

 

― それにしても、あの開口一番はすごかったです。正直、前座さんの高座には、さほど期待はしないわけですが、惹き込まれました。なぜなら、面白かったからです。前座さんのネタで、しかも「子ほめ(※)」で、あんなに笑うことができるのか、お客さんを笑わせることができるんだ!と良い意味でショックでした。前座噺も舐めたらだめだなと。しかも、私だけならまだしも、他のお客さんもたくさん笑ってましたから。あんな空気を味わったのは、(立川)笑二さんの前座時代(※)以来です。いや、普通に「子ほめ」であそこまで笑ったことがなかったから、笑二さん以上だったかも。ともかく、面白くてびっくりして、(すごい!すごい!)って。心の中で。(すごい前座さん、見っけ!)って。うれしくて。あそこまでウケて降りる前座さんを観たことがなくて

 

ありがとうございます(照)。

 

― そのときは、 「囀や(※)」さんもまだ開店してなかったですし、朝太郎さんを狙って聞きにいくこともできずに、悶々としてました。前座さんだと出演スケジュールも中々把握できませんでした。それだけに、「彦六一門前座勉強会(※)」を知ったときは嬉しかったです。

 

でも、僕はあれですよ。初高座、絶句でしたから(爆笑)。

 

― いつのことですか?

 

2014年、8月上席に楽屋入りして、8月4日ですね。鈴本の夜席、(柳亭)左龍師匠師匠の芝居(主任興行)ですね。「そういえば、こないだ神田の叔母さんが来て、たいそう怒ってたぞ」ってところがポンと抜けまして。別に抜けたからと言って、そんなに困らない、むしろ平気な件(くだり)なんですけど…。

 

いまだと、高座に上がっても、どこか俯瞰で自分の高座を(客観的に)見ることができるんですけども、当時は、もう稽古してきたのをそのままやるだけでいっぱいいっぱいで。が~っと(気持ちが)入りすぎて記憶がないと言いますか。あんまり、入り過ぎちゃうとダメなんですよね。冷静にできてないというか、コントロールできてないというか。そんときは、そんな状態で。

 

らくだ亭のときは逆で、リラックスできたというか、気負わずできたからですかね。(らくだ亭の)あのときは10分高座で。10分版だと酒屋の番頭さんを出さないんですね。歳のくだり、ご隠居さんに教わる部分をカットしてやるので。褒めていただくばかりではなく、「構成がおかしい!」と批判されたりもします。お客様にいろいろと言っていただくのは、ありがたいことですね。

 

「子ほめ」という噺自体、好きですしね自分で。「子ほめ」は裏切らないと言いますか、頼りになるネタですね。僕みたいな前座だけではなく、ベテランの師匠方がやっても面白いですしね。

 

※ エゴサーチ:ネット上で自分の名前やハンドルネームなどで検索をし、自分自身の評価を確認する方法のこと

※ 2015/10/26 - 人形町らくだ亭(第62回)@日本橋公会堂春風亭朝太郎:「子ほめ」/隅田川馬石:「粗忽の使者」/露の新治:「中村仲蔵」/―仲入り―/五街道雲助:「持参金」/春風亭一朝:「死神」

※ 立川笑二:前座時代から頭角を現し、スーパー前座として名を轟かせた。落語立川流の大人気若手の一人。第9回くがらく出演者。

※ 囀や:2015年4月4日にオープンした、落語会や講談会のイベントを行っている雑司ヶ谷のお店。若手を応援してくれるありがたい場。

※ 彦六一門前座勉強会:林家彦六(=八代目正蔵)門下の弟子たち(前座)たち~一朝師匠の弟子(朝太郎・一花・一猿・朝七)、文蔵師匠の弟子(かな文・門朗)、彦いち師匠の弟子(やまびこ)ら~がメンバー。囀やさんで開催。

※ 子ほめ:仲間に赤ん坊が生まれたので、お祝いに行って、子供を褒めちぎって喜ばせて、ただ酒にありつこうとする男の噺。代表的な前座噺。

 

「真田小僧」をやっているときが一番楽しいですね

― いま一番得意なのは?どの噺をやっているときが一番楽しいですか。

 

「真田小僧(※)」ですね。うちの師匠と同期で仲の良い(立川)左談次師匠から教わりました。僕が見習いのとき、下北沢で「一朝・左談次二人会」ってのがありまして。そこで聞いた左談次師匠の「真田小僧」がすごく面白かったんです。なので、“いつか習いにいきたい”とずっと思っていました。最初は一門(の師匠や兄弟子)から教わるんですけど、8席くらい覚えたら、師匠が「出稽古に行っていいよ」と言うので、師匠を通じて左談次師匠に話を通していただきまして。それで、稽古をつけていただきました。

 

左談次師匠の「真田小僧」は独特のくすぐりがありまして、冒頭の刑務所ごっこのくだり。「松岡さんとこのかっちゃん、ごらんよ」(※談志師匠の本名が松岡克由)ってのがあるんですけど、これが落語通の人にはウケるんですよね(笑)。

 

先日も、新宿末広亭で「真田小僧」やってましたら、袖で(鈴々舎)馬桜師匠(※)が聞いてらして、「誰に教わったんだ?」って。「左談次師匠です」と答えると、「やっぱりそうか。懐かしいな」と。馬桜師匠と、うちの師匠は前座時代、一緒に働いた仲で、「雑俳つ花連」(ざっぱい つばなれん※)の仲間でもあります。その頃に、この「真田小僧」の原型が出来上がったらしいです。

 

― 最近覚えたネタについて

 

最近まで「牛ほめ(※)」を持ってなかったんですけど、覚えてからは「牛ほめ」いいなぁと。やりやすいですね。「金明竹(きんめいちく※)」の与太郎とは違う与太郎なんですよね。「牛ほめ」の与太郎は結構好きですね。自分の中ではいま「牛ほめ」が一番熱いです(笑)。あとは、うちの師匠に教わった「雑排(※)」。自分が高座でかけ始めたら、前座仲間の間で雑排ブームが来ましたからね(笑)。

 

― 一番の大ネタはなんですか?

 

現時点では「竹の水仙(※)」です。三朝(※)兄さんに教わりました。

 

※ 真田小僧::さなだこぞう。口がうまい、小賢しい息子の話術に翻弄される父親の話。途中で終わることが多いが、最後まで聞く(本寸法だ)と、なぜ「真田小僧」というタイトルなのかがわかる。上方版は「六文銭」とも。

※ 立川左談次:キレのいい口調、飄々とした芸風。凛とした姿勢の粋な落語家。江戸落語の至宝。大の読書家。昨年、ツイッターで癌に罹患していることを告白。一日も早い完治・寛解を祈願します。

※ 鈴々舎馬桜:数々の受賞歴もある実力派ベテラン。立教大学文学部兼任講師として教壇に立った経験も持つ知性派落語家。

※ 雑俳つ花連:ざっぱい つばなれん。昭和50年、若手落語家たちが芸域を広げることを目的に発足した会。当時の若手=いまはみなさん、早々たる重鎮。メンバー:柳亭小燕枝柳家さん喬五街道雲助春風亭一朝古今亭志ん橋柳家小里ん鈴々舎馬桜金原亭馬生入船亭扇遊柳家小ゑん橘右之吉橘右橘。ちなみに雑俳(ざっぱい)とは、川柳や都々逸といった言葉遊びの総称。雑俳の種目は100以上あるといわれるが、つ花連で取り上げているのは「洒落附(しゃれづけ)」・謎掛けの原型といえる「物者附(ものはづけ)」・「冠沓附(かんくつづけ)」など約30種目。つ花連結成のきっかけは1970年代、東京・上野にあった寄席本牧亭で二ツ目が開いていた「若手花形落語会」に遡るとのこと。鹿芝居(落語家の芝居)をやることも。

※ 牛ほめ:兄貴の佐兵衛が家を新築したと聞き、家の褒め方を教えて、息子の与太郎をそこに送りだす父親。ところが与太郎は・・・

※ 金明竹:きんめいちく。骨董屋のおじさんに世話になっているぼんやりした男・与太郎。今日も今日とて、店番。そこにいろいろなお客が訪れてきて・・・。

※ 雑排:ざっぱい。八五郎が隠居の所に遊びに行き、最近凝っていると言う雑俳(五七五)で遊び始める。天(出来の良い句)を目指して何句も何句も…。

※ 竹の水仙:名人と呼ばれた大工・左甚五郎を主人公とした大ネタ。ちなみに、左甚五郎が登場する噺としては他に「ねずみ」や「三井の大黒」があります。

※ 春風亭三朝:「やかんなめ」で、平成26年度NHK新人演芸大賞大賞受賞の実力派兄さん。

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。一刀さんの素顔、そして本音。

 

 

春風一刀 独占インタビュー(2)

春風一刀 独占インタビュー(3)

春風一刀 独占インタビュー(4)

春風一刀 独占インタビュー(5)

春風一刀 独占インタビュー(6)

 

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