春風一刀 独占インタビュー(2)

僕に落語家になるきっかけをくれたのは、市弥兄さんです。

― 落語家になろうと思ったきっかけを教えてください。

 

フリーター時代に、地元の友達と飲んでたんです。そしたら、そいつが「うちの兄ちゃんが、脱サラして落語家になったんだ」って言うんですよ。まったく落語に興味はありませんでしたけど師匠誰?って聞くと「柳亭市馬(※)って言うんだけど知ってる?」って。「知らないな。柳亭?柳家って言うんじゃないの?」なんて言ったりして。本当に(落語に関して)なんの知識もありませんでしたから。

 

― ところで誰なんですか?その市馬師匠のお弟子さん、お友達のお兄さんと言うのは?

 

市弥兄さんです(柳亭市弥※)。

 

― ええーー!!!

 

うちの家族と市弥兄さんところは、家族ぐるみの付き合いなんですよ。地元が同じですし。市弥兄さんの弟が僕の友達なんで。

 

― では市弥さんつながりで落語界に?

 

それが違うんです。それからしばらくは別に何にもなく。一年ぐらい過ぎた頃でしょうか。ふと、「そう言えば、落語家になったっていってたな。じゃ、一度見に行ってみるかと。確か2013年2月の下席じゃなかったかと思います。池袋で圓太郎芝居(※)でした。一之輔兄貴(※)がまだ二つ目で出てました。番組が良くて(=出演者が素晴らしくて)菊之丞師匠、白酒師匠、三三師匠、百栄師匠(※)といった売れっ子の師匠方が大勢出ていらっしゃいました。

 

自分は市弥兄さん目当てで行ったんですが、その日は急遽お休みで、市弥兄さんは見らんなかったんです。ところがトリの圓太郎師匠の「三方一両損(※)」がすごくて。びびっときちゃいまして。「落語って、こんなに面白いものなんだ」って初めて気が付いたんですね。それからはネット動画を見まくりまして。もう片っ端から。

 

そんな中、うちの師匠に辿り着きまして。市弥兄さんからも「一朝師匠はいいよ」と後押しされて、弟子入りを決めた、って次第です。

 

― すんなり、弟子に採ってもらえたんですか?

 

ええ、もう、すんなり。4月上席初日、池袋の昼席。出待ちして、声かけました。「弟子は採ってないから」と断られたんですけど、こっちは師匠が掛け持ちしてたのネットで調べて知ってましたから。「この次、上野(鈴本)ですよね?」「え・・・(なんで知ってるの)」みたいな(笑)。で、僕も上野に移動して、上野でも出待ちを。そのとき師匠に「わかった。じゃ、明日同じ時間に来てくれる?」と言われました。それが最初ですね。

 

― で、翌日

 

はい。上野の風月堂(※)でお話を伺いました。「落語家になんかなっても喰えないから、止めた方がいいよ」と言われました。「親御さんも心配してるだろうし、このことは話してあるの?」「はい、もう伝えてあります。がんばれと言われてます。応援されてます」。「わかった。そこまで言うなら、今度親御さんと一緒に来て」と。ちょうど時期的にタイミングも良かったんですね。兄弟子が二つ目に上がるときで。前座がいなくなるときだったので。

 

― はい。その後は?

 

それから一週間後、母親を連れて師匠と。また風月堂で。そしたら師匠が「お母さん、ご心配でしょう。落語家は喰えないなんて言われてますけど…大丈夫です。なんとか喰えますから」って(笑)

 

― はっはっは(取材スタッフ。大爆笑)

 

「親御さんさえ宜しければ、私がこの子を預かります」と。それで入門がかなったというわけです。いやぁ、懐かしいです。

師匠はもちろん、僕は、おかみさんにも頭が上がりません。とても良くしていただいているので。

 

― 入門後はどうでしたか?

 

大変でした。大変でしたけど、うちの師匠じゃなかったら、僕は続けていられなかったでしょうね。とにかく優しいですから、師匠は。僕は、おかみさんにも頭が上がりません。よくしていただています。可愛がっていただいています。

 

― そうでしょうね。 「囀や」さんでの勉強会に、おかみさんがいらしてましたから。びっくりしました。

 

はい。「彦六一門前座勉強会」のときは必ずといっていいほど足を運んでくれます。ありがたいことです。いつも見守ってくださってます。特に、僕と一花(※)がおかみさんと接してきた機会が多くて。近いので。見てください、これが僕の待ち受け画面(師匠とおかみさんのツーショット写真。下記参照)です。誕生日会のときの写真です。

 

― 一朝一門では、最初に教わるネタはなんですか?

 

僕らの時は「寿限無(※)」でした。その次に一之輔兄さんに「道灌(※)」。その次は三朝兄さんに「たらちめ(※)」。その次は柳朝師匠に「平林(ひらばやし※)ですかね。

 

― “僕らの”ということは、以前は違ったのですか?

 

柳朝(※)・一之輔・三朝の兄さん方は「子ほめ」だったそうです。一左兄さんのときからが「寿限無」です。当時、「寿限無」ブームみたいのがありまして、小学生がみんな「寿限無」を覚えたりとかして。なので仕事をする上で「寿限無」を持って(覚えて)おくといい、学校寄席に行ったときにも武器になるみたいな。うちの一門はみんな個性が違ってて面白いですね。

 

※ 柳亭市馬:4代目柳亭市馬(りゅうてい いちば)。落語協会所属の落語家、同協会会長。

※ 柳亭市弥:サラリーマン(広告代理店)を経て、柳亭市馬師匠へ入門。二つ目。“男前”な若手落語家として有名。

※ 圓太郎芝居:橘家圓太郎師匠の主任興行

※ 春風亭一之輔:言わずと知れた当代切っての人気若手落語家。飛ぶ鳥を落とす勢い。

※ 古今亭菊之丞:歌舞伎役者のような粋な風貌に洒脱な話芸で大人気の古今亭の雄。文部科学大臣新人賞をはじめ、数々の受賞歴を誇る。

※ 柳家三三:やなぎや さんざ。2007年公開の映画「しゃべれどもしゃべれども」において落語家役で主演した国分太一(TOKIO)に稽古をつけたり、2010年より小学館ビッグコミックオリジナル連載中の落語漫画「どうらく息子」(尾瀬あきら)の落語監修を担当するなど、人間国宝・小三治の流れを汲む正統派古典の担い手。

※ 春風亭百栄:超独特な個性と世界を操る噺家。新作落語が有名だが、実は古典落語も好きで得意とする両刀使い。

※ 桃月庵白酒:喬太郎師・一之輔師らと並ぶ、チケット入手困難系の代表的大人気噺家。愛嬌あるルックスと、それと対をなす毒気を含んだ卓越した話術が人々を虜に。

※ 三方一両損:神田白壁町の長屋に住む左官の金太郎と、神田堅大工町の大工・熊五郎との間のいざこざを巡る古典落語の代表的ネタ。

※ 風月堂:上野風月堂。1747年の創業より、多くのお客様に愛され続けている洋菓子の老舗。創業270年の節目にリニューアルした。

※ 一花:いちはな。妹弟子の春風亭一花さん。

※ 柳朝:六代目「春風亭柳朝」。兄弟子。一朝一門の総領弟子。

※ 寿限無:早口言葉あるいは言葉遊びとして知られる古典的な噺。ちなみに、寿限無とは、限り無い幸福のことを言います。

※ 道灌:どうかん。隠居の家に遊びに行った八五郎。太田道灌が山中で村雨(にわか雨)にあった時の様子を描いた屏風絵を見つけて…。

※ たらちめ:たらちねとも言う。漢字で書くと『垂乳女』。長屋に住む独り者の八五郎に縁談が。やって来たのは、やたら言葉づかいが丁寧な女性で・・・

※ 平林:医師の「平林(ひらばやし)」邸に手紙を届け、返事をもらって来るよう頼まれた商家の丁稚の定吉。ところが、名前を忘れてしまって・・・

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。一刀さんの素顔、そして本音。

 

春風一刀 独占インタビュー(1)

 

春風一刀 独占インタビュー(3)

春風一刀 独占インタビュー(4)

春風一刀 独占インタビュー(5)

春風一刀 独占インタビュー(6)

 

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