春風一刀 独占インタビュー(6)

 ― ご兄弟は?

 

三兄弟の末っ子、三男坊で。とにかくテレビっ子で、暇さえあればテレビ見てました。お笑いは大好きでした。一番大きかったのは、やはり市弥兄さんですね。それまでは友達のお兄さんだった、身近な人間が落語家になったという。

 

― 趣味はなんですか?

 

ガンダムが好きなので、はじめは「ガンダム」って書いたんです。入門当時の履歴書に。「ガンダム好きって書いておけば、ガンダムの仕事が来るんじゃないかな」って(笑)。安易に。のちに、それを見た一之輔兄さんには「なにこのガンダムって?舐めてんの?馬鹿なの?」って叱られました(苦笑)。「十年はえーんだよ!」って。

 

今回、二つ目昇進にあたって協会のページが更新されるので、どうしようかなと考え中です。趣味らしい趣味がないんですよね。飽きっぽいといいますか、熱しやすく冷めやすいといいますか。今の予定では、多分「裁判傍聴」になると思います(笑)。ガンダムはやめときます(笑)。

 

― 朝太郎さんの持ち味、特長。ご自身ではなんだと感じていますか。

 

なんでしょうね。ワケわかんないとこじゃないスか?(苦笑)。

 

― 朝太郎さんが噺家として、もっとも大切にしていることとは?

 

師匠には、「ウケる・ウケないに関わらず高座では手を抜くな」「全力で高座を務めなさい」と教えられてきました。それは絶対に守っています。それでも、まだまだ“緊張しい”なので、高座に当たり外れがあって・・・。そこは今後の課題ですね。

 

― そうは感じませんでした。というのも、朝太郎さんの魅力のひとつに、人を喰ったような感じ(褒め言葉です。一之輔さんにも似た雰囲気。良い意味でのふてぶてしさ、堂々した態度、落ち着き)があると思っています。ご自分では、どのような噺家だと思っていますか。

 

いやぁ、(高座に上がる前の)内面は逃げたいくらいの心境です。どきどきです。汗かきなので、手を置いている太腿のあたりはびしょびしょだし。楽屋でもペットボトルの水を持ちながらうろうろしながら噺をさらってる(※)んですけど、ある先輩からは「お前は俺より偉そうだ。まるで真打のようだ」と言われたこともあります(笑)。そういう、ふてぶてしさはあるのかもしれませんね(苦笑)。

 

※ 噺をさらう:噺を叩き込むために何度も繰り返し復習すること。漢字で書くと「復習う(さらう)」。一方、似たような言葉で「ネタを手繰る(たぐる)」があります。こちらは、「どの噺をやろうかな?」と自分の持ちネタの中から演目を探し出そうとしていることです。

 

― 朝太郎さんが思う、前座と二つ目の差、境目とは?11月から、何が、どう変わるのでしょうか。

 

すぐに何かが変わるとは思いませんが、前座はとにかく「楽屋での働き」が要求されます。それから解放される喜びが大変に大きいです(笑)。と同時に、噺家として「よし、今日一番、俺が湧かしてやる!」という奮い立つ気持ちもあります。寄席だとトリまでつなぐというチームワーク作業ですので、俺が!俺が!じゃだめですけどね。気持ちとしては(師匠の教え通りに)全力で高座を務めたいなと。

 

― これから、どんな噺家になりたいと思ってらっしゃいますか。

 

僕は(入門時提出した)履歴書に「一人前の噺家になりたい」って書いたんですね。何を持って一人前とするかってのは、難しいところかも知れませんが。やっぱり、目指すはうちの師匠です。トリはもちろんですけど、寄席のどの位置(※)に登場しても、しっかり仕事をして帰ってきます。トリの一朝と、出番が浅い(※)時の一朝と。どちらも心地よく、おもしろいんですよ。うちの師匠と小満ん師匠は本当にすごいですよ。しかも、うちの師匠と小満ん師匠は誰からも好かれていますし。この二人を嫌いだという人に会ったことがありません。そんな噺家になりたいかなぁ。

 

※ 出番が浅い:寄席で比較的早めの時間帯に高座に上がること。トリは一番最後に上がる噺家さんのことなので、トリに向かって「出番が深い⇔浅い」という表現をします。寄席の位置とは、出番・順番のこと。

※ 柳家小満ん(やなぎや こまん):八代目桂文楽に入門。その後、師匠文楽死去に伴い、五代目柳家小さん一門に移籍。真打昇進で三代目小満ん襲名。当代きっての粋な噺家の一人。

 

普段はやさしい師匠なのですが、しくじったことが二度ほどあります。

 

― 一朝師匠は、どんな師匠ですか。師匠について教えてください。

 

弟子が、こんなことを言うのは畏れ多いですが、可愛いところもあると言いますか、愛らしい師匠です。弟子にも気を使ってくださる、優しい師匠なんです。

 

― 例えば?

 

そうですね。師匠は一花(いちはな。八番弟子)で弟子(をとるの)は最後、と言ってたんですよね。ところが、ある日、師匠が楽屋で僕のことを何度もちら見してくるんですよ。気になったんで「師匠、どうかしましたか?何か言いたいことがあるなら言ってください」って聞いたんですよ。そしたら「ごめん」って言うわけです。

 

「ごめんて、何ですか?何があったんですか?」。師匠「いやぁ、弟子とっちゃった・・・」って。「イイですよ。なんで謝るんですか」 師匠「いや一花で終わりだって言ってたのに、また(弟子を)取っちゃったからさ。朝太郎に悪いと思って。わりいけど、面倒見てやってくれる?」。「師匠、そんなこと気にしないでください」。それが一猿(いちえん。九番弟子)です。で、また、しばらくして「ごめん、朝太郎、また弟子とっちゃった…わりいけど、面倒見てやってくれる?」て。それが朝七( ちょうしち。十番弟子)です。

 

ありがたいことに、師匠とおかみさんには本当に可愛がっていただいています。特に、僕と一花は二個一(にこいち。二人で一人)みたいな感じで。息子と娘みたいな感じで。出来の悪い兄と、よく気が利くできた妹みたいな感じでしょうかね。よく師匠と二人で呑みに行ったりもありますし。落語界でこうして生き残っているのも、こういうのがあるからでしょうし。ありがたいことです。

 

― 優しいんですね、一朝師匠は。

 

はい。でもですね、そんな師匠をしくじったことが二度ほどあります。一度目は焼肉屋で。焼肉屋に行ったときに師匠に「カルビとロースとハラミ」って注文を受けました。手頃だろうからと、3種類がみんな載ってるワンプレートのタイプを頼んだんですね。で、来ました。そしたら師匠が「おい、どれがカルビだ?どれがハラミだ?」っておっしゃいまして。見分けがつかなかったんですよ。(やべー)ってなりまして・・・。空気がピリッと張りつめまして。僕のしくじりに対して、兄弟子に対して雷も落ちましたし。「おい、ちゃんと(弟弟子たちを)教育しておけ!」って・・・。要するにセコいことするな!という。みなさん、一朝が怒るところなんて想像もつかないでしょうけれども、あんときはヤバかったです。うちの師匠はセコ(※)な店には行かないので、そのお店も高級店だったんですけど、そんときばかりはまったく味がしませんでした。味わえませんでした。

 

※ セコ:せこい。しみったれている。

 

― 二度目は?

 

お酒を飲みに連れて行っていただいたときのことです。ある会の打上げでした。結構、飲んでたんですよね。で、師匠から某落語会の行程表をいただきまして。その後、すっかり忘れていたんですよ。で、後日。「師匠、あの落語会の行程表、もう届いているはずだと思うんですが?」って聞いちゃいまして。「お前に渡しただろう?酔っぱらって忘れてやがるな」。冷やっとなりまして。確認したら、うちにありまして。「師匠、すみませんでした。ありました」。そしたら師匠が一言。「あってよかったな。あれ失くしてたら、これだよ(首を切る仕草)」って。あん時は背筋が凍りました。

 

 

一朝一門ですから、(自分は)素材としては悪くないと思います(大爆笑)。

 

― 一朝師匠に、次に教わりたい噺はなんですか?

 

「鮑のし(※)」ですね。最近、師匠が良くかけるネタでして、教わりたいなと思っています。先日、師匠がこのネタをやってから楽屋に下りて来て「あぁ、ダメだ」って嘆くんですよ。どうしたんですか師匠?どこがダメなんですか?って聞くと「師匠(五代目春風亭柳朝)みたいにポンポンいかねえんだよ」って。この「鮑のし」って、うちの大師匠が得意にしてたネタらしいんです。師匠ですら、日々、葛藤・努力している。見習わなきゃですね。師匠が大事にしている噺ですから、絶対に教わりたい噺の一つです。

 

※ 鮑のし:お金を借りるために、賢い女房に祝いの口上を教えてもらって大家の家へ来たぼんやり亭主。ところが・・・。

 

― これから考えていることはありますか。仕掛けやビジョン、覚えたいネタ、今年やろう/いつかやろうと思っていることなど。教えてください。

 

新作(落語)を創ると、古典(落語)の勉強にもなると聞いたので、二つ目に上がったら、新作づくりにも挑戦してみたいと思っています。

 

あとは、彼女が欲しいです(笑)。募集中です(笑)。

 

― 最後に、これを読んでいるお客さんに一言お願いします。

 

(春風亭)一朝一門ですから、(自分は)素材としては悪くないと思います(大爆笑)。前座にも関わらず、くがらくさんにはお声掛けいただいてありがたく思っています。過去の出演者の錚々たる兄さん姉さんがたに負けないように、また、その期待を裏切らないようにがんばります。ただ、二つ目になりたてですし、一人の会もこれからなので、やさしい目で、温かく見守っていただけたらと思います(笑)。ただし、やる時はやる男なので、期待もしてください!

 

〔あとがき〕

「小児は白き糸の如し、何て申しまして。お子さんというのは生まれた時は真っ白な糸なんだそうで。それが親御さんの教育ですとか周りの環境によっていろいろな色に染まっていくそうで…」

 

こんな出だしで始まるのが、いま一刀さんが大好きな噺に挙げてくれた「真田小僧」。

 

まさに、ご本人が今、“白き糸の如し”な状態なのではないでしょうか。ご自身の立ち位置や成長過程とダブって思えるから、演っていて楽しいのでは?などと勝手に憶測して聞いていました。

 

大好きな一朝師匠やおかみさんの影響や寵愛を受け、数々の兄さんたちや他の一門の師匠方の影響、さらにはお客さま方の叱咤激励を受け、「これだ!」と言えるようなはっきりとした“春風一刀の色”が付いていくのは、まさにこれから。春風のような淡い青なのか、鋩(きっさき)鋭い刀の色・白銀なのか。

 

誰も見たことのない、恐らく本人さえもわからない、これから色づく“春風一刀の色”。一席一席が非常に楽しみな噺家さんです。

 

なお、取材陣から見ますと。すでに明るい未来と、誰もが羨む落語の才能(の種子)を手に入れている(ように思います)が、一刀さん本人は「彼女が欲しい(笑)」ということです。

 

彼女ばっかりは落語のセンスと稽古では簡単に手に入らないかもしれませんので、自薦他薦問いません。我こそは!と思う方は、ぜひに。

 

注)インタビューさせていただいたのは二つ目昇進直前の10月後半でしたので、取材時は「朝太郎さん」とお呼びしていました。この記事がアップされている現在は「一刀さん」ですので、そのように表記させて頂きました。ご了承ください。

 

(インタビュー&撮影:2017年10月吉日)

取材・構成・文:三浦琢揚(株式会社ミウラ・リ・デザイン


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。一刀さんの素顔、そして本音。

 

春風一刀 独占インタビュー(1)

春風一刀 独占インタビュー(2)

春風一刀 独占インタビュー(3)

春風一刀 独占インタビュー(4)

春風一刀 独占インタビュー(5)

 

 

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