柳亭小痴楽 独占インタビュー(1)

嘘はつかない。筋を通す。仲間を大切にする。

噺家さんを理解するためのキーワードはいくつかある。小痴楽さんの場合だと、二世落語家/若いけど11年目/威勢がいい二つ目/NHKの大会で決勝まで行った/最近で言うと“イケメン若手落語家”/成金(成金というグループ内では香盤最上位 ※)。

だが、実際はそんなに単純ではないのだ。柳亭小痴楽というヒトを理解すると言うのは。本人は「僕ほどわかりやすい人間はいないでしょ」と笑う。

 

が。いや、いや、いや。違いますから!

楽輔門下(柳亭楽輔)に移りたての頃から拝見してきた、私たち「くがらく編集部」としましては、(あの頃の小痴楽さんが、こんなにも)という感傷も抱きつつも、“まっすぐな男”だということくらいは知っているので、やはりこうして、正式にインタビューともなると大緊張するわけでして・・・。(取材:くがらく編集部)



― 昨日、兄弟会をやってらっしゃいましたね。惣領弟子(※)として、その辺いかがですか?

 一門は僕にとっては家族同然ですから。年齢は下ですが、お兄さん(的立場)でいなきゃと思っています。成金においても同様です。メンバー間では同期だ、仲間だという気持ちでいますけど、他所から見たら一日でも入門の早い僕が一番上の香盤(先輩。責任を負う立場)です。そういう(上下関係の厳しい)世界です。

 

※:惣領弟子:その一門を取り仕切る(誰もが認める)弟子のこと。必ずしも一番上の兄弟子(一番弟子・筆頭弟子)が惣領弟子だとは限らない。小痴楽さんは柳亭楽輔一門の惣領弟子です。

 例えば師匠方に何かをお願いするときなど「なんで(一番上の)小痴楽が挨拶に来ねえんだ?」ってなるのはまずいとわかっていますから。「(師匠に)挨拶に行くなら、俺も一緒に行かせてくれる?」とは常に言っています。そういう一門、仲間内における長兄としての役目、意識は常に持ってますね。噺家ならみんな当然持っている気持ちでしょうけども。

 前座の時でもそうです。親父が親父なんで(落語家・五代目柳亭痴楽)目立つというか目に付くので。師匠方も僕になら「なんだ、てめー、この野郎」とか言いやすいんですよ。何かあった時には、まず僕に(小言を言いに)来るので。

 例えば、仮に成金メンバーのうちの誰かが何かちょっとやった、例えば誰か師匠を怒らせたとするじゃないですか。そうすると僕のところに来ます。「お前んところの…」ってなるんですよね。そういう意味でも、がつんと前に立つ気はないですけども、成金メンバーに何かがあったときの風当たり、風は僕が全部受け止めなきゃなとは思っています。

 

※成金:“成りあがり”を目指す話題の若手ユニット。メンバーは落語芸術協会に所属する二ツ目(前座と真打ちの間)さんたち11人。メンバーは柳亭小痴楽昔昔亭A太郎瀧川鯉八桂伸三三遊亭小笑春風亭昇々笑福亭羽光桂宮治神田松之丞春風亭柳若春風亭昇也)。


 あとは僕のキャラもあるので、他の成金メンバーがしくじったときに比べれば、僕がしくじった時のほうが断然刑が軽くて済みます(笑)。「あぁ、こいつじゃしようがねえや」ってなるんです。でも、あの人たち(他の成金メンバー)だと、そうはいかない。「お前の師匠は誰だ。師匠と一緒に頭下げろ」ってなったりする。僕の場合、「へへへ」って誤魔化したりしてると、「何だ、お前は。親父そっくりだな、馬鹿野郎」で済んじゃったりとか。そんなケースもあります。

 こんな感じですからね、そういう万が一何かがあったときに、いつでも前に立っておきたい(風除けになって、困りごとを処理したい)・状況を知っておきたいって気持ちが強いので、「(師匠に)挨拶に行くなら、俺も一緒に行かせてくれる?」ってなるわけです。

― ここ、記事にしますけど。よいですよね?ここを読んだ方は小痴楽さんのイメージが、きりりっと締まって見えてくると思います。

 いや、僕の場合、根っからいい加減な人間ですよ。ただ、うちの親父に口を酸っぱくして言われてきたのは

  1. ・嘘はつかないように。
  2. ・筋は通しなさい。(自分の信念を貫き通しなさい)
  3. ・仁義(道徳、落語会のルール等)は大切に。


この3つです。とは言うものの、あぁ、やっちまった!ということは何度もありますが(笑)。そんなときは(その失敗に)気づいただけマシだなと自分を甘やかしてしまったりもしますけどね。まぁ、とにかく、上の人たちに失礼のないようにとは考えてやっています。

― 弟たち(弟弟子)はかわいいものですか。

 ええ、まぁ。すごく怒ります。指導もします。いまは明楽さん(柳亭明楽)、楽ちんさん(柳亭楽ちん)の三兄弟ですが、それまでの二人兄弟、明楽さんとの二人会のときは、ペンとノートを持って彼の高座をずっと脇で聞いてるんです。彼が噺を終えて高座を降りてくるときに、そのノートをぱっと渡して、「これ読んでおいて」って。で、入れ替わりに僕が高座に出て行く。

― へ~

 「絶対にこの言葉遣いは間違っているから、あそこはこうじゃなくて、こうだよ」なんてことをずっとアドバイスしてました。弟弟子の高座を聞いてメモしてると、自分にも返ってきますから。自分でも気づくようになるので一石二鳥です。

 (でも、僕が指摘するのは)絶対におかしいぞ、間違ってるぞという部分だけですよ。それ以外は自由です。噺家がそれぞれ考えて演(や)らなきゃいけません。僕が「ああしろ、こうしろ」っていうのはダメですから。「こう演りたいんでしょ?だったら、こうしたほうが良い、こうしたほうがもっと良くなるかも。」みたいなことは伝えます。

― やさしいですね

 それは僕自身が文治師匠(当時は平冶。十一代目桂文治)にしていただいたことですから。前座のとき、ずっと師匠が舞台袖に立って見ててくれるんですよ、僕の高座を。それはもう、ものすごい緊張感でした。

 今の僕が舞台袖に立ったくらいでは、まだ明楽さん、楽ちんさんにプレッシャーを与えるなんて無理ですけど、10年後、20年後、僕が舞台袖に立ってるだけで、(高座に上がった)話し手が顔面蒼白になるくらいの噺家になりたい。そのくらいのプレッシャーを与えることができる立場にいたい、実績を積みたい、結果を残したいと思っています。

 口だけで言っても説得力ないですから、しっかりとお客さんを呼べて、満足させられる、アドバイスに説得力がある実績のある噺家になりたいです。僕のアドバイスが正解とは限らない。取り入れるか否かは、本人たちが決めればいいことです。それに、正解は固定されない。正解は毎日変わると思っています。同じ噺でも日々違います。出来も反応も。だから「今日の正解はこうだったと思うよ、ストックのひとつとして留めておいてね」ってくらいのもんです。

 成金メンバーで、それ(ノートに書き留める)はやらないですけど、終わって呑みに行って、そこでああだこうだは言い合いますね。例えば昇也さん(春風亭昇也)から「兄さん、あそこのあれは、ああじゃなくて、こうでしょ」「あのセリフ、余計でしょ。要らないですよ」なんて言われたり。んでもって、次どこかで抜いてやってみて「あぁ、やっぱ、あのセリフ余計だったわ。かえってスッキリした、ありがとう」だとか、逆に「あのセリフは必要なんだよ!」とか言い合えるので「成金」はとてもよい勉強の場です。