柳亭小痴楽 独占インタビュー(2)

年収の3分の1は(新しい)着物代に当てるのが、僕の中でのルール

― (インタビュー1からのつづき) では、その「成金」についてのお話を。

 もともと「成金」として組む以前に、「コチフェス」(※)というのをやってまして。落語協会からも、落語芸術協会からも僕の好きな噺家さんを呼んでやろうとした会です。そのときに呼んだのが、あとになってみるとほぼ「成金」のメンバーだっとという。前から好きなメンバーでしたから。「成金」の話は、雷太(春雨や雷太。現在、桂伸三:しんざ)・松之丞が声をかけてきて。「それって、ほぼ、『コチフェス』メンバーじゃん、いいよ、やろうよ」と。

 

※:2013年9月23日 らくごカフェで開催された、小痴楽さんが主催し、昼夜で行われた伝説のお祭り的落語会
昼の部 出演:桂宮治三遊亭好の助神田松之丞春風亭一蔵・柳亭小痴楽・古今亭半輔
夜の部 出演:柳亭小痴楽・春雨や雷太瀧川鯉八古今亭志ん八春風亭柳若瀧川鯉○
http://rakugocafe.exblog.jp/20909562 より

― もう、「コチフェス」は開かないのですか?

 もうやらないです(苦笑)。ああいう自主興行は準備したりするのが面倒なので。(いい加減な性格の)僕には向いていないなと。小屋(会場)からチラシから、何から何まで自分でやらなきゃいけない会というのは非常に不向きといいますか。

― なるほど。そういえば、以前は映画「トレインスポッティング」を模したチラシなどもつくってらっしゃいましたよね?「シャイニング」とか。

 やってました。「トレインスポッティング」のチラシデザインは自分でもとても気に入っていて、あの後の勉強会のチラシもすべてあれにしようかと思ったくらいです。いろいろまずいかなと思い、やめましたが、ああいうのは好きなのでまた復活できたらなとは思います。とてもやりたいですね。

― 最近は当時ほど、らくごカフェさんでの勉強会は開いてませんね。

 いまは借りてないですね。道楽亭さん(新宿2丁目)で3ヶ月に一回、囀りやさん(雑司が谷)で毎月やってますが、このような会が増えてきたので。以前とは状況がどんどん変わってきていますね。小さな勉強会をたくさんやって、自分興行の勉強会はしない代わりに、自主興行の大きな独演会を年に数回。とは思っているんですが。

― 我々も行きましたが、以前、文京区のシビックホールで独演会をなさってましたね。

 そうです、あの手の落語会を年に3~4回は行いたいと思ってはいるんですよ。本来は今月、伝承ホール(渋谷区文化総合センター大和田)を借りて行うはずだったのですが、色々と上手くことが進まず。去年の9月には、「なかの芸能小劇場」での勉強会の告知が2週間前、ぎりぎりの告知になってしまい、お客さんに呆れられました。何度も同じ失敗はできないと思うので、(伝承ホールでの会は借りるのを)キャンセルするつもりです。なので、今年は2回ですかね、自主興行の独演会。

― 楽輔師匠と「成金」について話したりするんでしょうか?

 しないですね。師匠も「成金」については知ってるでしょうけど、何も言ってきたりはしませんね。文治師匠(桂文治)とか、遊雀師匠(三遊亭遊雀)などもご存知で、気にかけてくださっていますが、敢えて成金、成金とは言わないでいてくださいます。ああいうところが、ものすごく格好良く思えます。

 一方、歌丸師匠(桂歌丸)は、会うたんびに「どうなんだ?」と気を使ってくださいます。ちょっと前までは「(小痴楽、お前は)どうなんだ?」だったんですけど、最近は「お前のことじゃないよ!成金のことだよ」って言います。「今年は(年末に)成金はどこでやるんだ?」なんてことまで言ってくれて。ありがたいことです。ただ最近、調子に乗ってて(笑)「最近、俺、呼ばれないな」って言い出してて、「おいおい、(日本橋成金に)毎月出るつもりなのかよ!」なんて(笑)、やさしい人なんですよ。

― 最近取材が多いと伺いました。

 そうですね。でも、テレビで取材されてもあまり使われてないですけどね。

― この「くがらく」の取材前も、別の取材だったとか?

 いえ、成金の打ち合わせでした。年末の「大成金」以来、久しぶりに全メンバーが一同に集まって。これからのことについての打ち合わせを。年にいっぺんくらいですね。

― どんな内容ですか?

 いや、まだ言えないんです(笑)

― 秘密の?

 そうですね。まだ秘密です。

― では話を変えましょう。高座でお召しになってる着物がいつもすてきです。着物選びは、どこにこだわってらっしゃいますか?

 特に(こだわりは)持っていませんが、好きなのは渋い系ですね。若いから明るい派手めのものをと言われたりもして、なるべく華やかなものを買うようには しているんです。で、着ることは着るんですが、どうも落ち着かない。(小痴楽という)人間自体がすでにうるさいので(笑)、それで華やかな着物だと、自分でも鬱陶しく感じてしまうんですね。着物は地味でいいんだよという気持ちが根強いです。ジジくさい(笑)もののほうが好きです。

 ただ、黒紋付はほとんど着ません。黒と言う色が好きじゃないのと、黒紋付でしくじっている経験があるので。

― しくじったというのは?

 実は、桂ち太郎時代(2005年より、現・十一代目桂文治師匠の内弟子。当時は二代目桂平治)、文治師匠の黒紋付を預かってた時に寝坊しまして。それまで師匠はずっと高座に上がる時は黒紋付でというのが決まりごとだったのですが、そんときの僕の失敗が原因で、その流れを断ち切ってしまいました。

 「俺はずっと黒紋付で通してきたのに、お前のせいで俺の信念曲げられた!」と叱られまして。それからですね。人様の大切にしてきた部分を折ってしまった 自分が黒紋付なんておいそれと着るもんじゃないなと。申し訳なくて。それからは、黒紋付でしくじった自分が気軽に着て良いもんじゃないなとは思っていま す。なんか黒と言う色がきゅっと自分を締め付けるような気がして、窮屈さも感じるもので。

 それくらいですね。洗える着物が嫌いとか、そんなこだわりもありませんし。着心地は絹(正絹:しょうけん)のほうが好きですが。

 正絹の良し悪しもあるんですよ。ライトの加減で正絹だと色がぼやけちゃう時があります。却って洗える着物のほうが光沢が映えて見栄えが良かったりとか。 今でこそテレビの再生技術やらなにやらは上がりましたが、ブラウン管テレビの時代ではテレビ映えするのは正絹よりも洗える着物だったようです。それはもう 段違いに違うと聞きました。

 とてもお洒落で着物にこだわりをもっていらっしゃるある師匠の話なんですが、その師匠は色がよく映ると言って、洗える着物を着てらっしゃいます。とは言 うものの、とても質の良い、ほとんど正絹と見分けが付かない良いものです。高級なものは通気性もよく、着心地もほとんど正絹と変わらないらしいです。価格を聞いて驚きました。正絹以上に高かったです。

― お父さんの着物を着たりなどは?

 着ます。身幅があるものは直してきたり。背格好が似ているので、ほとんどはそのまま着ます。うちの親父は着道楽だったのでとてもたくさん着物が残っているんですが、親父のばっかり着ていると(新しいの買わねえのか。着物に金かけてねえな、こいつ)と思われるんじゃないかと(笑)。それが嫌で、悔しいので、なるべく自分で買うようにしてます。年収の3分の1は(新しい)着物代に当てるのが、僕の中でのルールです。

― 格好いいですね!

 年収の3分の1は着物代、残りの3分の2は、お母さんに取られると言う(笑)。一銭も残らねえじゃねえかという(笑)。お母さんにそれを言ったら「だったら、着物を買わなきゃいいじゃないか」と言い返されました。

― 以前、文京シビックでの独演会に行ったときに、受付付近でお母さまがばりばりに会を取り仕切っていらっしゃいました。お母さんにマネジメントしてもらうと言うのはどうなんでしょう。

 嫌です。絶対に。落語のことには一切口出しさせません。

― その割には、先日のツイッターで見ましたが、お母さんに命じられてお使いに…

 ああ、あん時は「誰々さんに、これを届けてくれ」と言われて、命じられて、二つ返事で「へいっ!」と(笑)。「はい」じゃなくて、「へいっ!」と(笑)。言うこと聞かないと怖いんで、お母さん。

― どんなお母さんですか。やはり、“師匠のおかみさん”みたいに感じるものですか?

 父親を“柳亭痴楽”として見たことはないので、母親を“柳亭痴楽のおかみさん”と思ったこともないです。母親とは昔から仲が良いですね。いっしょに洋服買い物に行くとか、友達みたいな感覚といいますか。口うるさいのは嫌だ嫌だとはずっと思ってきてましたが。そんな母親に対する気持ちが一変したのは、親父が倒れてからですね。

 今から11年前のことです。まだ、母ちゃんが30代後半~40歳になったばかりの頃だったでしょうか。(父ちゃんが倒れて寝たきりになっちゃったんで、 あ、こいつは逃げるな。俺と兄貴、ガキを2人置いて逃げるだろうな)と思っていたんです。まだ40代で若いですし、他に男をつくって逃げるだろうなと。

 そんな気持ちを持ちつつ、家で暮らしてたら、一生懸命うちの親父の世話するんですよ。尽くすんですよ。女盛りのいい時代を倒れた親父に捧げると言うか。そんな姿を見てて、考えを改めました。(あぁ、この人も筋を通して生きている)と。変な話、いい女だなぁと(笑)

― 芸のことでアドバイスを受けたりは?

 絶対に言わせません。それだけはないです。いま、うちの母ちゃんとケンカになる一番の話題が落語に関してです。落語の“ら”の字も知らないくせに、ほと んど落語会に見にも来ないくせに、「落語なんてわかんない」なんて言ってる奴が一丁前にアドバイス風なことを言ってくるから、こっちもカチンとくるんですよね。知った口を利いたりするのが許せない。

 昔、親父が元気な時に、一度だけですが、母ちゃんが親父に厳しく叱られてたことを覚えています。そんときも知った口を利いて、ってのが原因でしたね。当時は、親父に対して(母ちゃんになにするんだ!)って気持ちでしたけど、いまになると親父の気持ちがよくわかります(笑)。うるさいよ、ちょっと黙ってて よ、って。

 自分の彼女に対してもそうですね。落語のことには一切口を挟まないでほしいと。お客さんがおもしろい、おもしろくないというのを言ってくださるのは構わないんです。そうじゃなく、身内が落語家のスタイル(生き方、慣習)に口を挟むのは嫌だぞ、と。