古今亭駒次 独占インタビュー(2)

自分の世界があるかどうかは意識はしてないんですけどね。でも、人の新作はやはり人のですね。

― 噺家さんになる前、学生の時から新作がお好きだと伺いました。特に円丈師匠がお好きだったとか。

 はい。「プーク(※)」へ行ってましたね。素人の時から通ってました。会場のあの独特の変な感じが大好きで。なので、自分が噺家になって実際にプークの高座に上がった時は、とってもうれしかったんですよ。(中は、こんな風になってるんだ。こんなに汚いんだ)って思って。

― プークに呼ばれたのは、なにがきっかけで、どならからですか?

 前座の時に「僕、新作やりたいんですよ」って彩大兄さん(※)に言ってたら、「じゃあ来なよ」って誘っていただいて。それでですね。そのうち、「つくってる噺があるなら(高座に)上がっててみれば?」って感じになっていって。

― 円丈師匠に弟子入りしようと思わなかったのですか?

 思わなかった(笑)。なんでだか知らないですけど思わなかったです。全く。選択肢になかったですね。なんででしょう。あんなに好きだったのに。

― やっぱり聴くのと、人生を預けるのとでは違うんですかね。

 そこまでは考えてはなかったですけど、思わなかったですね。昇太師匠(※)も好きだったんで、いろいろな会に行っていたんですけど。全然思わなかったですねえ。不思議ですねそう言えば。

― 駒次さんのつくる新作って、円丈師匠のつくる新作とは、また全然違います。どちらも個性的で、独特の世界観があります。駒次さんの新作落語はスマートというか、ストーリーがきれいな、というか、ドラマチック。

 (自分の世界があるかどうかは)意識はしてないんですけどね。でも、人の新作はやはり人のですね。円丈師匠の新作は、仮に僕がやっても無理だなって思いますね。自分でやってもウケないだろうなと。円丈師匠の著書「ろんだいえん―21世紀落語論」にも書いてありますけど、「(新作落語をつくる場合には)絶対に落語を参考にしちゃだめだ」ってあります。確かにそうだと思います。

※    プーク:新宿南口にある「プーク人形劇場」。新作をはじめとして、いろいろな落語会を催している。
※    三遊亭彩大:さいだい。円丈師匠のお弟子さん。埼玉(「彩」の国)の「大」宮)出身で、この名前に。
※    春風亭昇太:師匠が新作落語の名手と謳われた春風亭柳昇であり、同じように新作落語を活動の中心に置き、「悲しみにてやんでい」など型破りな新作落語で人気。先ごろ、「笑点」の新司会者に抜擢。
※    「ろんだいえん―21世紀落語論」:落語界の「新作確信犯」といわれる円丈師匠による21世紀落語論。落語理論と現状分析、新作落語の作り方、そして落語の演じ方まで、師匠の全落語理論が詰まった一冊。

祖母が久が原に住んでいたんです。しょっちゅう遊びに来てました。

― 他のインタビュー記事にありましたが、大学2年生のとき、池袋演芸場に円丈師匠を目当てに行ったら、志ん駒師匠(※)が出ていて、そこで惹かれたとか。

 はい。坊主頭で昔っぽいの顔をしたおじさんなのに、颯爽として、かっこよくて、なんて面白い人がいるんだろうと思いました。しかも、うちの父親が二つ目のころの師匠を好きだったらしいんですよ。(それで入門するなら)この人だと思いまして。

― 志ん駒師匠について。芸に厳しい、怖いイメージがあるんですけど。

 最初は怖かったです。ただ、うちの師匠は怖いですけども言った後は、けろっとしてます。言うだけって感じです。埼玉県川口市出身ですけど、江戸っ子っぽ い人ですよ。僕は師匠が66歳のときに入門しました。昔の芸人の匂いに触れることができたのは、僕にとって良い経験です。

― 志ん駒師匠は、弟子が新作をやるってことに関しては?

 前座の頃はだめって言ってましたね。だからまあ、新作やるとは言わずに演ってました。「円丈師匠の会に行っていいですか?」みたいに。「いいよ」って言われて、それで(行く口実できた!)みたいな。

― 入門して一番はじめに覚えた噺は?

 「弥次郎」ですね。師匠に教わって。うちの師匠も最初、志ん生師匠から「弥次郎」を教わったそうです。珍しいですよ、最初に「弥次郎」教わるなんて。普 通は「道潅」とか「寿限無」とかでしょう。「弥次郎」って滅茶苦茶難しい噺なんです。ひたすら嘘をつき続けるだけの噺なんで。しかも、うちの師匠の「弥次郎」は、いれごと(※)をものすごくしていたんです。なので前座の僕は、そういうのを抜いて話さなきゃならない。すると(ギャグを抜いてやったんで)おも しろいことひとつもなかったんです。わずか7分位しかなくなって(笑)。

※    古今亭志ん駒:しんこま。海上自衛隊出身という経歴。五代目志ん生が最後にとった弟子であり、唯一存命の志ん生師匠のお弟子さん。
※    いれごと:元の台本にない台詞やギャグ(を盛り込むこと)

― 駒次さん、鉄道好きはいつからなんですか?

 子どもの頃ですね。祖母が久が原に住んでいたんです。3歳位の時に祖父が亡くなったんですが、その時まで住んでたと記憶しています。しょっちゅう遊びに来てました。御嶽山の新幹線も祖父に教えてもらったんです。通り道や場所はもう全く憶えてないんですけど、家は憶えています。平屋の小さな一軒家でした。 父方の叔父が大井町線の緑が丘に住んでますし、東急線にはものすごい縁があります。去年でしたか、御嶽山~久が原のおばあちゃんたちの落語会に呼ばれたこ ともあるんですよ。

― 鉄道系のお仕事に就こうとは思わなかったですか?

 それは思わなかったですよね。ちっちゃい頃は思ってましたけど。やっぱり10代後半となるともっとかっこいい方にしか眼が向かないじゃないじゃないです か。音楽系の職業になりたかったんで。バンドとか。でも何にもできないので。ただかっこいいからなりたい!と思ってただけで。

― どうしてホルンに向かったんですか?(編集部注:駒次さんの特技はホルン・篠笛演奏)

 ある大学の文化祭に行ったんですよ。そしたらビックバンドをやっていまして、かっこいいなあと思って、それで吹奏楽部に入りました。本当はトランペット をやりたかったんですけど、人気ですから(担当したがる人が)いっぱいいるんですよね。で「ホルンかっこいいよ!」と口車に乗せられてって感じですかね。 でも実際やってみるとホルンってかっこいいんです。すごい花形。今はできるって感じではないです。大学から始めたんで、まあ酷かったですよね。今でも年に 一回、正蔵師匠のバンド(※)でやっていますけど。

― 笛は入門してからですか?

 師匠に言われて、一門の先輩のやまと兄さん(※)に「笛ができると披露目にも呼ばれるし、やっておいた方がいいよ」って。しばらく習いに行っていて、その後は独学です。出囃子など、太鼓だけじゃなく笛が入ると華やかですよね。

― 駒次さんはいわゆる「乗り鉄」だそうですが、一番好きな路線を教えてください。

 お世辞でもなんでもなく、池上線です。叔父のところに行ってた頃から好きです。当時はまだ緑の電車が走ってたんですよね。たまにしか来なかったんですよ。帰りも、あの緑のに乗るために何回も待って乗ってましたよ。

― 全国いろんな電車、路線に乗ってらっしゃると思うんですけど、これはおすすめだよっていうのありますか?

 この辺のみなさんには鶴見線ですね。こんなに都心に近いのに秘境です(笑)。(こんなとこあるんだ…)っていう驚きの連続です。普通の人が行ってもおもしろいですよ。めちゃくちゃおもしろいです。

 

※    正蔵師匠のバンド:毎年5月31日の浅草余一会でやっている噺家バンドのこと。「音し噺の会」。メンバーは柳亭市馬(唄)、林家正蔵(トランペット)、入 船亭扇辰(ギター)、柳家小せん(トランペット)、ロケット団(倉本剛:アルトサックス、三浦昌朗:ベース)、林家ひろ木(司会、パーカッション、カ ズー)、古今亭駒次(ホルン)、のだゆき(ピアノ)、中川英二郎(音楽指導、トロンボーン)
※    桂やまと:七代目桂才賀のお弟子さん。生粋の東京っ子らしい闊達な口調と、生き生きとした人物描写が持ち味。笛が上手い

― 駒次さんの池上線、多摩川線に対する感想を教えて下さい。

 どちらも都会に打ち捨てられた路線ですよね(笑)。どちらかというと、多摩川線の方が打ち捨てられてますかね。多摩川線の方は目黒線ってのがあるんで。 もともと目蒲線だった目黒線がかなりメジャーになってしまって、東横線にも乗り入れているし、こっちに行くと白金なんかもありますし、そういう風になって るのに。多摩川線は短いし、最高ですよ(笑)。池上線は駅のベンチが、まだ木製っていうのがありますし。茶色の、いいですよね。味があります。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで噛んで味わってください。駒次さんの味。

古今亭駒次 独占インタビュー(1)

古今亭駒次 独占インタビュー(3)
古今亭駒次 独占インタビュー(4)

 

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