古今亭駒次 独占インタビュー(3)

― スワローズ落語会(※)というのもありますが、ヤクルトファンなのはいつからですか?

 昔からですね。うちの200メートル位のところに通称「ヤクルトマンション」ってのがあるんですよ。ヤクルトの選手が何人か住んでるマンションで。ささはた寄席に来てくれるお客さんが「昔、あのワニ食べる人、いたわよ」とか教えてくれて。パリッシュ、住んでたんだあって。落語界って、なぜか不思議とヤク ルトファンが多い気がするんです。小中時代はヤクルトファンが周囲にいて、その後社会に出るとヤクルトファンがいないことに気づいて。なんだヤクルトって人気ないんだと思ってたのに、落語家になったら結構たくさんいてびっくりしました。

笑わせるよりも簡単ですからね。泣かすってことの方が。絶対的に。どうみたって。

― ブログで読みましたけど、カメラ壊れたそうで。新しいのを買ったんですか?

 これまでは大きいのを持ち歩いてたんですよ。自分で撮るように一眼レフを。でも重過ぎちゃってやだなと。それで、ついこの間、フィルムのカメラで「オートハーフ(※)」っていう昔のやつを買ったんです。トイカメラとはまた違うんです。60~70年代に普通にみんな使ってたやつらしいんです。それを買ってみて、今使い始めてるんですけど、すごいね、可愛いんです。こういうやつんなんです。これ不思議なんです。巻き戻しはゼンマイになってまして、ちょっとかっこいいんですよ。ほんと今風の、今っぽいデザインなんですよ。
編集部注)5月時点でカメラが「GR2」に変わったそうです

― これまで、駒次さんはブログでいつも着物を着て自撮りを…

 最近、自撮りはやめて、羊毛フェルトで作った「駅員くん」という人形を登場させているんです。

― 羊毛フェルト?テレビでタレントの光浦靖子さんがやってるやつですか?

 そうです、あれです。まさしく、光浦さんのを見て(カワイイ!)と思って、やってみようかなと。去年からハマりだしたんです。それで「駅員くん」っていうのを作ったんです。駅員のキャラを。簡単そうに見えて、すごい難しいんですよ。

― ホルンに笛にカメラに手芸に。多芸で、器用ですね。

 全然器用じゃないです。ひどいですよ、駅員くん、今度お見せします。

― 「くがらく」で三体くらい売ってみますか?受付にも飾りたい。

 そうですね。できたらいいですね。ひとまずは「謝楽祭(しゃらくさい。湯島天神で行われる落語協会主催のお祭りイベント。今年は9月4日)」で、「駒次鉄道手芸部」として売り出そうと思っています。「駅員くん」と、あとは草履入れや、浴衣も自分で作ろうかなと思ってます。自分の手ぬぐいの電車の柄ので。

※    スワローズ落語会:スワローズファンの噺家さんたち(三遊亭天どん柳家東三楼立川吉幸笑福亭べ瓶林家彦丸古今亭始、古今亭駒次など)による落語会。スワローズファンじゃなくても楽しめます。
※    オートハーフ:正しくは「リコーオートハーフシリーズ」。理研光学(現リコー)によって1961年から1979年まで製造されたハーフサイズカメラのこと。
※    GR2:リコーの高感度コンパクトデジタルカメラ。

― 一年に何作新作落語をつくるのですか?また、そのうち残るのは何作ですか?

 毎回「赤坂寄席」で2作ネタおろしをします。偶数月です。隔月。そこでのネタおろしを自分に課しています。2つやって、そのうち残るのは一作品ですね。

― 残す残さないのジャッジ。その基準は?

 それはお客さんですね。ウケたかウケないか。反応がよかったか、どうか。

― 赤坂寄席誕生の経緯を。

 二つ目になりたての頃、なにか自分だけの会をやろうと思って考えていました。2月に二つ目になって、3月に披露目終わって4月から始めました。それは前座の時に、「(前座修行に疲れたから、ちょっと休んでから会を・・・)なんて思っちゃダメだよ。すぐにやった方がいいよ」ってアドバイスをもらったからです。太神楽の和助兄さん(※)から。それで始めたのが「赤坂寄席」。

 

※    翁家和助:おきなや わすけ。国立劇場第一期太神楽研修生からプロへ。翁家和楽師匠のお弟子さん。現在は翁家社中として活躍中。

 

 ― 赤坂寄席のお客さんの反応を見て、残す残さないを判断するということでしたが、一度の落語会だけで判断するのは、もったいなくないのですか?

 赤坂寄席でやった後、他でも何回かかけてみたりはします。ただもう、(赤坂での)その時につまんないってわかるんですよ。「赤坂(寄席)」と「ささはた(寄席)」と「つくば(落語会)」っていうのが、僕の中での最初のフィルターですね。まず赤坂で、生まれて初めて作ったものを演ってみる、そのあと練って、二つ(ささはたとつくば)でやってみて。そのあと、他でも演っていく。そんな流れです。

― 駒次さんのつくる新作落語は、ただおもしろい・笑えるというものだけではなく、「公園のひかり号」のようにお客さんをほろりとさせるネタもあります。あれは古典落語で言うところの“人情噺”的な新作をつくろうと思って書いたのですか?

 古典落語の人情噺を意識はしていません。ただ、笑わせるよりも簡単ですからね。泣かすってことの方が。絶対的に。どうみたって。いつもそうですが、(ただ、できちゃった)っていうだけです。でも、最初にネタおろししたときは、反応はいまほどではなかったです。高座にかけながら、徐々に変えて行って、今に至るという感じで。かみさんには噺を聞かせるというよりも、説明してます。人に言うと結構わかるんです。あーこういう噺だったんだって冷静になれるというか。客観視。それを求めて言うって感じですかね。

― スリが登場する「最後の雪」も、じーんとくるじゃないですか。

 「最後の雪」という噺は、年季が必要だなと思っています。もうちょっと僕自身が歳を取ってからのほうが、聞いてるお客さんが乗ってくると思っています。あと僕の場合、場面変換をもうちょっと少なくしないと。それが反省点ですね。「最後の雪」は特に場面の変換が多くて6回あるんですよ。一般的に4回が限界だと言われています。

― 小ゑん師匠が円丈師匠に言われたと聞いたことがあります。「場面の変換はせいぜい3回か4回だよ」と。

 本当なら2回がいいんですよ、落語って。そこまで頭で追いかけられないですから、普通。場面展開が多いと、お客さんがストーリーに付いてこれなくなっちゃう。で、(あれ?なに?わからない)ってなった瞬間、お客さんが、ぱーっと離れるんですよね。高座で見ててわかるんです。お客さんの離れていく瞬間(笑)。

― (いわゆる、お客さんが)“引いていく”ってのはわかるもんですか?

 わかりますよ、一発で。パッと引いたなってのは。空気で。でもそれを気にしすぎるとだめですし、あまり寄せてもいけない。ウケないところは必ずわかってきます。あと、自分で(おもしろい!)と思ったところほど、ウケないんです。(俺、天才じゃないかな?)と自信満々なところほどウケない(笑)。

― そういう意味では赤坂寄席は、実験の場でもあるわけですね。

 赤坂寄席は本当にいいですよ。新作のネタおろしを、あそこまで受け入れて、聴いてくれる人たち(の会)って中々ないですから。よく「自分の会って自分のこと好きな人だから、全然反応あてにならないよ」って言われるんですけど、新作落語に関しては僕は必要だと思いますよ。まずあの雰囲気でやってやれるっていうことは、本当にありがたいですよ。一般的なおじいちゃん・おばあちゃんと違って、新作のネタおろしを無理やり聴かされてるんで(笑)、たいていのことに耐えられる人たちなんです。

誰かに似せられる・似せることができるっていうのは落語には必要なことなんです。似せることができるのは上手い人の証拠です。

― 真打になったら、どうするんですか?お名前は。

いやあわかんないです。狙っている名前もありません。

― 噺家さんって割と誰かに似てるところが、どこかしらあるように思っているのですが、駒次さんて誰にも似てないですよね。

 似てる人っていうのは才能あるんですよ。その師匠に似せられる人っていうのは上手いってことなんです。耳がいいってことでもある。口調を似せられる。真似が上手いってことがまず、古典に関してはまずそれが必要なんですよね。最初そうやって真似して、しばらくしたら、そっから離れていくという。龍玉兄さん(※)ってそんな感じなんですよね。
 僕、龍玉兄さん好きなんです。雲助師匠(※)にそっくり。最初聴いただけではわからない位にそっくり。でも、もう似てるけど離れていって、それが自分の骨みたいな感じになって、今すごい注目されてるという。そういうのって最初必要なんですよね。
 僕も師匠に噺を聴いて、耳で聴いて僕も師匠と同じようにやってるっていう思ってましたけど、聴いてみると全然違うんですよ。全く違うもの。だから、誰かに似せられる・似せることができるっていうのは落語には必要なことなんです。以前は自分も古典をしてましたけど、全然似てなかったですよね。似せることができるのは上手い人の証拠です。

 

※    蜃気楼龍玉:三代目しんきろう りゅうぎょく。端正な古典落語の使い手。高座に上がった佇まいの美しさと口跡が良く、骨太な芸が高く評価されている。師匠・雲助の薫陶を受け、圓朝の長編人情噺にも取り組んでいる。
※    五街道雲助:ごかいどう くもすけ。龍玉師匠の師匠。重厚な語り口ながら、軽妙な味わいを併せ持つ「正統派の雄」。古典落語の中でも廓話、圓朝噺を得意とするが、怪談噺でも評価が高い。

― どういう真打、噺家さんになりたいですか?

新作といえば…みたいな感じにはなりたいですね。新作で、自分の世界をやっていきたいですよね。やり過ぎちゃう感じではなく、ワールドをつくりだせる人というか。

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで噛んで味わってください。駒次さんの味。

古今亭駒次 独占インタビュー(1)
古今亭駒次 独占インタビュー(2)

古今亭駒次 独占インタビュー(4)

 

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