立川笑二 独占インタビュー(3)

師匠もお墨付き。天性の面白み+膨大な稽古量。

― 談笑一門特有のルールはあるんですか?

 

前座時代に言われたのは「二つ目になって好きな様に落語を演りな。それで向いてなかったら辞めてくれ。中途半端な落語家にはなるな」でした。あれしちゃだめ、これしちゃだめという細かなルールはありません。“売れる落語家”にならないと辞めなければならないのが談笑一門特有のルールであり、(そういうルールから考えると)恐らくうちの一門が落語界で一番ハードルが高い一門ではないかと思います。

 

― 笑二さんの場合は、師匠に「辞めた方がいい」と談笑一門の鉄の掟を突き付けられたことはないですよね?

 

ありがたいことに、まだないですね。本当にいつもいつも褒めてくれます。「笑二は面白い。笑二は面白い」って。こっちが恐縮するくらいに(笑)。「才能あるよ。才能あるよ」って。

 

― 毎度、そんなに絶賛されて、褒められて、どうですか?

 

毎回うれしいですね。飽きないもんですね。言われたら、言われた分だけうれしいです(笑)。

 

― 具体的に、どんな風に褒めてくれるのですか?

 

これからいうことは師匠曰く、ですよ。

 

「笑二にはフラ(※)があるから普通にやっていてもウケる。それなのに稽古も人並み以上にちゃんとやっている。だから、さらに面白い。すごい面白いギャグも考え付くから、もっと面白い。もう、この先、笑二はどこまで伸びるか俺にもわからないね!」

 

なんてことを普通に、おっしゃってくださいます。

 

― 前座時代に言われた「二つ目になって好きな様に落語を演りな。それで向いてなかったら辞めてくれ」。笑二さんの“好きな(ように演る)落語”とはなんでしょうか。

 

師匠の言葉の真意は「前座は教わったとおりにやらなきゃダメなんだ。だから、自分に才能があるかどうかはわからない。そのためにも、早く二つ目に上がって、好きな落語を好きなようにやって(自分の才能を)見極めるほうがいい。好きなようにやってお客さんに認めてもらえたらよし。認めてもらえなかったら辞めて、他の道を探すのがいい。(早く結果が出た方が人生のやり直しも、その分、早くて済むという考え)」です。

 

※ フラ:その芸人独特の何とも言えない可笑しさ・面白みのこと。その芸人さんが纏っている目に見えない面白い空気感。真似したり学んで身に付くものではない、ある意味、天賦の才。

 

― 笑二さんは、師匠をしくじった経験はお持ちですか。

 

しくじった経験はありません。怒られた経験は一切ないんです。とても穏やかで優しい師匠です。ただ、チクリと言われたことはあります。

 

― それは?

 

二つ目に昇進が決まって、はやる気持ちでいっぱいの頃です。あるホール落語会に前座で呼ばれまして。それはコンテスト(賞レース)だったんです。賞レースに参加している兄さんたちよりもウケてやろう!爪痕残そう!と意気込んで、当時自信作だった「真田小僧(※)」をやって、ウケて高座から降りてきたら、師匠に一言注意されました。「面白かった。面白かったけど、こういうデリケートな会で(前座が)ウケようとしてはいけないよ」と。それくらいですね。あとは、沖縄なまりが出たりしたときに、そこは注意を受けますけど。それくらいです。

 

※ 「真田小僧」:さなだこぞう。口がうまい、小賢しい息子の話術に翻弄される父親の話。途中で終わることが多いが、最後まで聞く(本寸法だ)と、なぜ「真田小僧」というタイトルなのかがわかる。上方版は「六文銭」とも。

巧い人に負けないように。面白い人になりたい。

― 談笑師匠のもっともすごいところ/尊敬するところ/怖いところを教えてください。

 

落語はもちろんですが一番は人柄です。人間の器がでかい。とにかくでかい。はんぱないでかさ。笑う時、「わっはっは」って笑うんですよ。笑う時、「わっはっは」って笑う人って周りにいます?師匠は本当に、この文字のとおり「わっはっは」って笑うんですよ。豪快に。楽しそうに。優しい笑顔で。

 

そもそも、自分の弟子をここまで褒めてくれる師匠って、他に知りません。

 

「貶すよりは、褒めた方がいいだろう。俺が褒めた方がお客さんにも伝わるだろうし、お客さん呼べるだろうし」と。そう言って褒めてくださいます。普通に高座でも褒めてくださいます。本当にありがたいことです。落語界の師弟で、師匠がここまで弟子の評判や集客にまで気を使ってくれるなんて、他ではないはずです。他の一門の人に聞いたことありませんから。

 

私の初高座は北沢タウンホールです。芸歴1か月のことです。師匠の会の前座で上がって「道灌(※)」をやりました。芸歴1か月の前座の「道灌」です。ウケるわけはありません。完全に滑ってるんですよ。でも舞台の袖から師匠の「わっはっは」が聞こえてくるんですよ。うれしかったですよ。もんのすごくうれしかったですよ。心強かったですよ。師匠の「わっはっは」だけで初高座を乗り切りました。

 

優しさに甘えないようにしなければいけませんから、今でも緊張感はあります。でも、(売れなかったら首だぞと)煽られたのは最初だけ。今は褒めてくれるばかりです。うれしくなって、また、がんばる。その連続です。

 

※ 「道灌」:どうかん。隠居の家に遊びに行った八五郎。太田道灌が山中で村雨(にわか雨)にあった時の様子を描いた屏風絵を見つけて…。

 

 

― はじめて教わったネタは何ですか。

 

「道灌」です。「道灌」は私が初めて覚えたネタでもあり、今の自分のスタイルをつくるきっかけになったネタです。

 

― と、言いますと?

 

前座時代、「道灌」を師匠に見てもらったときのことです。「談志の道灌を聞いて覚えてこい」というのがその時の宿題だったので、まんま覚えて演ったんですよ。

 

自分の家に帰ろうと隠居の家を飛び出した八五郎が突然の雨にやられるシーン。「ざぁざぁ村雨だね、底抜け村雨だね」というのが、その時の家元のまんまのセリフです。突然の大雨を表す描写です。

 

それを聞いた(談笑)師匠からは「それだと雨が降ってる感じがでないでしょ?」と指摘を受けました。(そのまんま覚えて演ってるのになぁ)と思っていると、「ざぁーって(降って)来たねぇとか、そういう一言があった方がいいんじゃない。その方がお客さんも土砂降りを想像できるから」と。

 

それを言われてはっと気づきました。

 

「そうか。(名人の)立川談志なら、この表現でも通じるけど、今の私では、この表現はお客さんに通じないんだ。私の場合は徹底的に土砂降りだと伝えないと、わかってもらえないんだ」と。

 

そこからですね。他のネタに関しても「この師匠は、このギャグでウケてるけど、それは、この師匠のキャラがあってのことなんだ。私が同じようにやってもウケるとは限らない。自分なりの言い回しを考えなきゃ」と思うようになりました。

 

ほとんどの落語家は「ざぁざぁ村雨だね、底抜け村雨だね」で、突然の土砂降りが伝わるように稽古しているんだと思います。巧い落語家さんはみんな、そこのテクニックを磨いていると思うんです。でも、私は巧い人よりも面白い人になりたいと思っているので、自分なりの「ざぁざぁ村雨だね、底抜け村雨だね」を考えて伝わるようにやっている、そういうことです。

 

― どんな人が巧い人だと思っていますか。

 

身近な例ですと、例えば一緒に会をさせて頂いている小辰兄さん(※)は、まさに“巧い人”です。とても巧い方で、毎回とにかくびっくりしています。教わった通りにやって、それで笑いをとれる。客席を沸かせることができる。「巧い人」とは、私が思うに、自分を出すことなく、ウケることができる人でしょうね。自分ではなく、落語自身が持つ“(落語の)ポテンシャル”だけで客席を沸かせることができる人。三三師匠(※)なども、そうだと思いますし。他にもたくさんいらっしゃいます。

 

― 他のインタビューで「まず自分がどうみられているか。把握した後でそれを生かしてネタをつくらないと。」とおっしゃっていました。

 

そうです。「ここは立川笑二らしくないな。立川笑二には、この部分は似合わないな」などと客観視してアレンジを考えています。“沖縄出身で、おおらかで、がさつなところもあり、明るい立川笑二”らしい噺に仕上げたいと思っています。

 

※ 入船亭小辰:いりふねていこたつ。入船亭扇辰師匠の一番弟子(二つ目)。流暢かつ端正な落語で人気。コタツとショウジ(炬燵と障子)だから「和室」で「和室カフェ」と銘打って定期的な二人会を開催中。

 

※ 柳家三三:やなぎやさんざ。真打。人間国宝・柳家小三治を師匠に持つ、古典落語の王道をゆく若き実力派。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。笑二さんの声、そして本音。

立川笑二 独占インタビュー(1) 

立川笑二 独占インタビュー(2)

 

立川笑二 独占インタビュー(4)

立川笑二 独占インタビュー(5)

立川笑二 独占インタビュー(6)

 

プレゼントあり!「くがらクイズ」笑二篇