立川笑二 独占インタビュー(4)

基本系を徹底して稽古し、型破り(アレンジ)を。自分なりの落語。アレンジして自分らしく。

― 笑二さんの落語ですが、与太郎さんのようなボケ役の人の面白さもさることながら、彼らに翻弄される大家さんとか大店の旦那さんとか、そっちの人たちも、とてもおかしいですよね。

 

そうですね、なんでしょうね。自分でもね、よくわかりませんけども(笑)。

 

― 困らせられた人たち、迷惑を受けている人たち側のユニークさ、おかしみがすごいじゃないですか。例えば、笑二版「蜘蛛駕籠(※)」などに登場する「それ、何の時間?」とか「不安定なのか?」とか「なんでー?」とか。ああいうフレーズ。

 

決してセンスある特別なひとことじゃないんですよね。特別な言葉ではないと自分では思っています。普段使いの日常的な言い回しで笑ってもらいたいと思います。それが笑二っぽさかもな、という。

 

― 笑二版「饅頭怖い(※)」の中には「ハチ公のかかあは、みんなのかかあだ」というセリフが出てきます。あそこなんて最高じゃないですか(笑)。一度聴いたら、忘れないほど強烈に印象に残るワンフレーズ。おもしろくて、おもしろくて、こうしてはっきりとお客の記憶に残るという。

 

あそこ、いいですよね。自分でもあそこの部分は本当に面白いと思います。なんなんでしょうかね。バカみたいですよね(笑)。でも、いいですよね。

 

― 「元犬(※)」なんて、全体が面白い。あんな(ストーリーの)アレンジ、笑二さんでしか聞きません。とっても面白いです。

 

▲▲▲が▲▲▲になるだなんて、私の「元犬」だけでしょうね(苦笑) ※▲は編集部の伏字

 

― どんなときに、あの手の爆笑フレーズ、お客さんのツボに刺さるようなセリフ、改作が生まれるんですか?

 

なんででしょうかね。時々、ふわっと浮かぶんですよね。自分でもわかりませんね。ひとつ言えるのは飽きっぽいからかもしれません。

 

― 飽きっぽいと言いますと?

 

がっちり稽古してると「完全に頭に入ったな」という段階にどこかで到達するわけです。最低限覚えたという段階ですね。そこを超えてさらに、さらっている(稽古している)と、同じことの繰り返し過ぎて自分の中で飽きてくるんですね。そうすると、あちこちいじりたくなる(アレンジしたくなる)んです。完全に覚えて、さらってる。そんなときに、おもしろいフレーズとか、セリフが生まれている気がしますね。

 

― 家元(立川談志)は「型ができてない者が芝居をすると型なしになる。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」とおっしゃっています。「型ができている者だけが、型破りになれる」。その言葉から察するに、笑二さんは基本という型を徹底した稽古で、からだに叩き込み、その上で、型破り(アレンジ)を行っているのではないでしょうか。だから、あれほどまでに大笑いできる古典落語を作り出すことができる、演じることができるのではないかと。

 

どうなんでしょうね、自分ではよくわかりませんねぇ。

 

※ 「蜘蛛駕籠」:くもかご。客待ちをしている駕籠(かご) 屋の二人組。目の前をいろんな人が通り過ぎていく。ついにお客を捕まえた。しかし…。

 

※ 「饅頭怖い」:まんじゅうこわい。若者数名が集まって、自分の嫌いなもの・怖いものを言いあいだした。蜘蛛に蛇に蟻など。だが、ただ一人、「俺は世の中に怖いものなどない」という男がいて…。笑二さんの「饅頭怖い」ではハチ公が妙に気になる。主人公じゃないのに…(笑)。

 

※ 「元犬」:もといぬ。白い犬が人間になれますようにと八幡さまに願掛け。祈りが通じて人間になったのはいいが…。白い犬に翻弄される側(大店の旦那)がおかしい。あと、意外な人が笑いのキーパーソン。

炸裂する笑二さんだけの“困りツッコミ”。翻弄される側の人が、とても面白い。

― ボケとツッコミで言うと、ツッコんでいるけど、(そこまではっきりとは強く)ツッコんでいないのが笑二さんの駆け引き。ボケている人に対して、その相手は諦めの境地に。(はいはい/わかった、わかった/もういいよ…)みたいな気持ちにさせておいて、そこでドカンドカンと笑いを巻き起こす。引き芸とも違いますしね。敢えて言うなら、【困り(ながらの)ツッコミ】とでも言いましょうか。ボケ倒されている人が困らされて困らされて、困り果てて放つひとことが抜群におかしいという。

 

(笑いが起きる)着地点に向かって、会話や周りを動かしていく。結果、その状況で笑わせるのが私(わたし)流、笑二流なのかもしれません。不思議なオリジナリティだと思いますね、自分でも。

 

― 受け手側で笑いを取る。

 

ボケで笑いを取るのが一般的ですよね。それが普通。ただ、それが行き過ぎると不自然なボケになってしまうんですね。キャラ的に言わないようなことを、とても変なこと言わせてボケさせたりして。そんなのは私、嫌なんです。違和感があるのが。仮にお客さんがそういうのを聞いて笑っているとしたら、それはそれで正解なんでしょうけども、私は個人的には気になるんです。不自然な感じは。そんな感覚の中で生まれてきたのが、“受け手が困りながらツッコむ”スタイルなんだと思います。どこかの時期に気づいたんでしょうね、私。

 

そういう意味では、もし私が18歳で上京していきなり落語家だったら、いまとは全く違う落語家になっていたでしょうね。お笑い芸人をやっていた経験が生きていますし、当時から自分でネタ作りしていた。それを落語に生かせるというテクニックをそれなりに身に着けてきて、今があると思っています。

 

― お笑いIQが相当高いんだと思いますよ、笑二さん。

 

どうなんでしょうね、自分ではよくわかりませんねぇ。


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。笑二さんの声、そして本音。

立川笑二 独占インタビュー(1) 

立川笑二 独占インタビュー(2)

立川笑二 独占インタビュー(3)

 

立川笑二 独占インタビュー(5)

立川笑二 独占インタビュー(6)

 

プレゼントあり!「くがらクイズ」笑二篇