春風亭昇々 独占インタビュー(6)

「落語のネタは生き物。人間の一生と同じかなと思います」

― いま、もっとも自在に操れてるなと感じるネタは?

 

「壺算(※)」かなぁ今は。来月になったら変わってるかもしれません。前は「お見立て(※)」でした。でもずっとやってると飽きちゃうんですよね。「飽きて来たな」と感じると、すると落語がどんどん死んでいく。落語(の噺・ネタ)は生き物、人間の一生と同じかなと思っています。生まれて、よちよち歩きをはじめて、元気いっぱいな時期を過ごして、晩年になって年老いて衰えて行く。やり続けるといつか死ぬ。自分の中に常に旬があるんですよね。気持ちが乗るネタが旬。乗らないネタはやりたくない。

 

※ 壺算(つぼざん):「時そば」と同じく、口の巧い男(言わば詐欺師)が主人公の噺。二荷入り(にかいり)の水がめを買いたい主人公。買い物上手だと言う兄貴と一緒に買い物に行くのだが…。(何べん聞いても筆者も理解できず、騙されてしまう。頭が悪いからか…)

 

※ お見立て:吉原遊郭の花魁の喜瀬川。大嫌いな田舎者の杢兵衛(もくべえ)大尽を追い払おうとして一計を案じたが…

 

― 新作で自由自在になるのはなんですか?

 

「待ちわびて(※)」とか、ですかね、今は一番好き。ずっとふざけてしゃべってる。自分の中では殻を破ったみたいな。そこまで評価はされてないですが。そんなん全然いいんですけど。自分がよければ。もういっぱい創ったしもう出ないよ(創作できないよ)!と思ったときに出来て、「全然まだ創れんじゃん!」みたいな。あと「生徒と先生(※)」も好きだな。みんなふざけてる。ふざけてるのが好き。

 

― (昇々さんご自身が)楽しそうにされているのは観ていてわかります

 

おもしろいなと思って、自分で笑うの我慢してやってるんです。バカだなあって。「待ちわびて」なんて自分で笑いをこらえながらやってるんです。

 

※ 待ちわびて:昇々さんの新作落語。夫に82歳で先立たれた花子は現在71歳。100歳になる義父の面倒見ている。しかしさらに…

 

※ 生徒と先生:昇々さんの新作落語。引きこもりの生徒・タカシを学校に来るよう、担任の先生が自宅まで説得に来る噺。実は気が弱いのに強がっているタカシ。こんなキャラを演じさせたら昇々さんの右に出る人ナシ?

 

― 以前のブログを読み返させていただくと。「オーラ君」とか「僕のペット(うさぎ)」とか、この辺は読んでいてゲラゲラ笑ってしまうんですが、こういうのは掘り返して見返してネタにして演じるとかなさらないんですか?

 

落語にはしないですね。でも自分でも見返して笑ってるんでゲラゲラ笑ってますね。ちょこちょこ書き直したりしてるんで、このオチはいらないなとか。改めて読み返すと直すところが見つかったり、僕は結構「ごんざぶろう伝説」とか相撲とりのやつが好きなんです。最後くだらない負けて終わるという。あとは「冬季将棋オリンピック」、これももう少し進めたいと思っているんですけどね。あれは結構考えて書いてるんで、なんかね労力かかるというか。

 

 

― 個人的には「ハッピーボイサーたかし」推しです(笑)。

「僕の名前はハッピーボイサーたかし 今日も美声で世界を守るよ」(2018年03月30日)(2018年04月02日より)

ごんざぶろう伝説 冬季将棋オリンピック オーラ君 僕のペット(うさぎ)

 

ハッピーボイスが地球を救うという(笑)

 

― (ネタにして)高座にかけたことありますか?

 

ないです、ないです(笑)

 

― 節をつけてやってもらいたいなと。だって美声で世界を守るわけですから。声を出していただかないと。

 

ははは。声を出さないから、いいのかもしれませんよ。想像して笑っていただければ。読者の方に自由に処理してもらえる。

 

― アイドル同士が闘うみたいのもありましたし、織田信長がブログを書くと言う(笑)のもありました。ああいうのはどんな時に…

織田信長blog

 

ふとした時にぽっと思い浮かぶじゃないですか。そうすると今日はブログを書かなきゃっていうのがあり、これネタに書こう。そそうして夜な夜な書いていたわけです。その妄想を膨らませて。あのくらいの文章量でも落語にするとしても(わずか)2~3分だと思うんです。

 

― ブログの新作だけの会があっても面白いかもしれませんね。

 

覚えないといけないんでね(苦笑)。大変は大変ですけども。その前にネタにするには全部をセリフにしないといけないですからね。そこがね、大変ですね(笑)。

 

「とにかく一刻も早く、落語を自由自在に操りたい。早くそこまで達したい」

― 将来のビジョン、今年以降の計画、野望などを教えて下さい。

 

とにかく一刻も早く、落語を自由自在に操りたい。早くそこまで達したい。俺はなにをやるにも人より劣っているので、ほんと、走るだけだと思っているんです。潜在能力として、人よりも多少は優れているのではないか?と思う点は。普通の人がゼロからのスタートだとすると、僕の場合は、マイナス10くらいからのスタート。

 

― テレビのお仕事はやってて楽しいですか?

 

いやぁ、大変ですね。これも高座と同じで、レポーターも回答者も自由自在にやりたい。やりたい、けどできない。ジレンマですね。「ポンキッキーズ」もようやく自由自在にできるぞ!という段階に来たと思ったら番組が終わっちゃいましたしね。最初はセリフを与えられて、それを言ってるだけだったんですけど、徐々にもう台本なしでも自由に喋れたし、立ち回れていたんで。そこまでに至るまでには人よりも時間が掛かると思うので、

 

とにかく今は落語を一生懸命やりたい。そのときそのときできるコトを全力で。その積み重ねがゴールに近づく最短距離かなと。ランニングも同じで、下を向いて、「あと5周だ、5周も残ってる」とは思わないように。

 

あと10年、20年しても出来てないかもしれません。わからない。脳が(人よりも)劣っているので、自分はこれでやっていくしかない。

 

― 順当にいくと真打になるのは?

 

上に何人いるかな?3~4年後くらいでしょうか。真打になってもできるコト、やるコトは変わらないと思っています。

 

― 真打になると弟子入り志願者が来ると思いますが。

 

今現在、弟弟子の面倒も満足に見れないのに、弟子なんかもっと面倒見きれません。来るわけないですよ。教えられませんし。何を教えたらいいんでしょう。考えたこともない。来るとしたら、俺のブログとか読んでくるんでしょうね。で、「こんなこと書いてましたが」って言われて。「え?書いたっけ?どれどれ見てみよう。あ、ほんとだ!でも今は違うよ」とかね(笑)。それを思うと、よくうちの師匠は教えてくれたなぁって思います。責任持って僕らを育ててくれたなぁと。ありがたい。

 

― 最後に、これをご覧になってから、会においでになる、「くがらく」のお客様に一言お願いいたします。

 

今から「くがらく」に向けてコンディションを整えていきます。僕のピークを「くがらく」に持って行きますので、楽しみにしていてください。そのつもりで来てください。

 


― あとがき ―

 

〔昭和〕実験落語⇒〔平成〕SWA⇒〔次〕昇々落語?

 

ここまでネットを使いこなしている出演者の方は居らっしゃらなかったので、今回はこのような編集スタイルにさせていただきました。都度都度、昇々さんのブログにジャンプしていただき、記事とブログと、相互でお楽しみいただければと思います。

 

昇々さんの言葉の端々から漏れる落語愛、新作落語と伝統との挑戦(せめぎ合い)、「自由」への渇望。

 

喬太郎師匠が古典落語と闘っている円丈師匠に刺激を受けた昭和、そしてその喬太郎師匠も昇太師匠らとSWA(※)などを通じて、また新作落語に風穴を開けようと、新風を巻き起こそうと奮闘してきた平成。

 

そして平成が終わり、次の年号に移り変わろうとしているいま、また、これまでとは違った新しい感性とセンスと覚悟で落語を横紙破り(既成概念を打ち破る斬新な発想という意味で)しようとしている人がいる。

 

昇々さんから「試行錯誤」や「実験」という言葉が出た時に、思い出したのは1970~80年代に三遊亭円丈師匠(※)や柳家小ゑん師匠(※)らが時代と格闘しながら行っていた「実験落語(※)」のことです。

 

昇々さんが個人で、かつまた「ソーゾーシー」で、やろうとしていることって…もしかして…。

 

ついにその答えは聞けずじまいでしたが、それはこれからの実際の高座で確かめることができるでしょう。

 

春風亭昇々さん。甘いマスクだけに目をとられていると真髄を捉え損なう落語家さんですよ。

 

昇々さん、お忙しい中、インタビューに答えて頂き、ありがとうございました。

 

 

 

※ 三遊亭円丈(えんじょう):昭和の落語界を代表する名人の一人と称される6代目三遊亭圓生の弟子であると同時に、奇想天外な世界観の新作落語を数多く生み出し、現在の新作落語の使い手、トップランナーたち(例えば春風亭昇太師・柳家喬太郎師ら)に多大な影響を与えた不世出、唯一無二の噺家。渋谷ジャンジャンの「実験落語」の他、池袋文芸座の「応用落語」、新宿プークの「落語21」、「落語ちゃん」など数々の新作の会を立ち上げて来た。奇(く)しくも今年7月、全演目、三遊亭円丈作品で「実験落語neo~シブヤ炎上まつり2018~」が開催され、好評を博した。

 

柳家小ゑん(こえん):「円丈以後の新作落語は市民権を得た」と語る円丈師匠の盟友。新作落語を中心に口演する。鉄道ファン、天文ファンとしても知られており、小惑星の「小ゑん」は自身の名前にちなんで名付けられた。江戸の言葉遊び「雑俳」にも造詣が深い。

 

※ 実験落語: 三遊亭円丈師匠が主催した実験的な落語会。1978(昭和53)年から、1986(昭和61)年まで、渋谷ジァンジァンで行われ、現代に至る新作落語の源泉となった超エポックメイキングな会。

 

※ SWAすわっ):創作話芸アソシエーションの頭文字からSWA。春風亭昇太・柳家喬太郎・三遊亭白鳥・林家彦いちによるユニット。今人気の「成金」以上に、当時はエポックメイキングな活動で話題をさらった。

(インタビュー&撮影:2018年8月吉日)

取材・構成・文:三浦琢揚(株式会社ミウラ・リ・デザイン


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。昇々さんの素顔、そして本音。

 

春風亭昇々 独占インタビュー(1)

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春風亭昇々 独占インタビュー(4)

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