柳家小太郎 独占インタビュー(1)

前回、お話を伺ったのは2017年の7月でした。それから約2年経ちました。そもそも、この「くがらくリターンズ企画」ですが、誕生の発端は前回の小太郎さんの回(第13回)での「くがらくでは、一度呼ばれたら二度と呼ばれない!」という一言が一番のきっかけ。そんなこんなで小太郎さんへ二度目のオファー。まずは、変わったこと、変わっていないことをお聞きしたいと思います。

 

「ベタなネタも怖がらずにやれるようになりました。」

― お久しぶりです。あれから2年経ちまして。

 

早いもんですね。

 

― 「くがらくリターンズ」誕生のきっかけは、あの小太郎さんの一言です。

 

はい、覚えてますよ(笑)。

 

― ぜひ、夏の時期にお呼びしたくて、今回(笑二さんの次)となりました。2年間のあいだで変わった点はありますか。

 

体重とネタが増えたことぐらいですね。あとは・・・変わりなく。相変わらず。

 

― 強いて言うなら?

 

強いて言うなら、ベタなネタをやるようになりました、多少は。最近、意識的に増やそうとしていまして。「転失気(てんしき※)」とか「妾馬(めかうま※)」とか「井戸の茶碗(※)」とか「抜け雀(※)」とか。ここにきてようやく、ベタなネタも怖がらずにやれるようになりました。開き直って来たのかもしれませんね。

 

※ 転失気(てんしき):てんしき。寺の和尚が往診に訪れた医師から「てんしき」があるかないかを尋ねられる。和尚は知ったかぶりをしてその場を取り繕い、小僧の珍念を呼んで「てんしき」の意味を探り出そうと画策するのだが…。

※ 妾馬(めかうま):めかうま。長屋に住む器量良しのお鶴が、ひょんなことから殿様に嫁入り。思いがけない血縁関係ができたお鶴の兄・八五郎は…。別名、「八五郎出世」。

※ 井戸の茶碗:人呼んで「正直清兵衛」、くず屋の清兵衛が、とある裏長屋で、千代田卜斎(ちよだ・ぼくさい)と名乗る浪人から、煤けた仏像を二百文で買ったところから物語が動き出し…。

※ 抜け雀:東海道小田原宿の宿屋に汚れた着物の男が宿泊。酒を飲んでばかりでお勘定をくれる気配もない。そろそろお金を支払って欲しいと言うと…。

 

― ベタなネタとは?

 

「よくかけられるネタ」ということですね。落語家が良くやるネタ。馴染のあるネタ。これまでは、そういうネタにあまり手を付けてこなかったんです。「あの人も、あの人も演ってるから自分は止めておこう、避けておこう」みたいな気持ちが強かった。でも、そういう気持ちが薄れてきたんです。自分で気にしなくなったんです。それで。

 

やってみてわかるんですが、なるほど「ベタなネタ」ってのは良くできてますよ。みんな演るわけだなと。改めて感じました。

 

― 開き直った理由は?

 

「いまのままじゃいけないな」という気持ちが自分の中に、常にあるからなんだと思います。だからといって劇的に何かを変えよう!とも思いませんが。

 

いくらウケたとしても「今の形が100点満点です!」とは全然思えなくて、意外とウジウジ悩むタイプなんです。「なんでだろう?」「どうすれば、もっと良くなるだろう?」とか。毎年、毎回(取り組む)テーマを変えて、やっているって感じですね。そのうち、他の人と比較するようなことも無くなってきました。それは自分にとって良かったと思っています。

 

「芸と言うのは“丁度良い”ってのがベストかなと。」

― (小太郎さんの高座はおもしろいので)お客として聞いていても、小太郎さんがウジウジ悩んでいるようにはちっとも思えないんですが。

 

お客さんにそんなとこを見せても、どうしようもないですからね。「悩んでるから、かっこいいでしょ」みたいなのではなく、憧れの師匠とか、自分よりも優れている後輩たちなんかを見ていると、自分よりもそういう点(人と比較しない/ベタなネタも覚える/自意識過剰にならない)が優れているなと思うんです。

 

― 気負わなくなった?

 

毎回気負っていたのか、毎回気負わなさ過ぎたのか。どっちなのかよくわからないですけども。

 

二年以上前の話になりますが、(さん喬)師匠からは、その頃はずっと「(お客様に)媚びるな」と言われ続けていました。「お前はお客さんに媚び過ぎる」って。高座の上での話ですね。

 

― 意外ですね

 

はい。他の方にも言われて。当時は、自分の中での悩みだったんです。それが今年、二つ目勉強会(※)のときです。たまたま、そんときうちの師匠だったんですね。そういう時ってだいたい同じ一門の師匠と弟子なので何となくダレちゃうんですが、そんときは違いました。

 

「お前は(お客さんより)偉そうにやり過ぎているよ」と言われました。

 

※ 二つ目勉強会:池袋演芸場での二つ目の会。毎回客席の後ろから色々な師匠たち(毎回異なるベテラン真打)が二つ目さんの高座を観てくれて、会の後で品評したり、アドバイスをくれる。

 

― あらら

 

そうなんですよ。二年前は「媚びている」と言われて直そうとして。その結果、行き過ぎちゃって今度は「偉そうだ」と指摘されてしまいました。マイナス5からゼロではなく、プラス5になっちゃったみたいな(苦笑)。ちょうど良いところで修正完了となれば良かったんでしょうけども、なかなかね。丁度良くはならなくて。「丁度良い」ってのは本当に難しいですね。

 

― フラットと言うか、ニュートラルと言うか。

 

芸と言うのは「丁度良い」ってのがベストなんじゃないかなと。そういうことにもようやく最近気がつきました。それまでは「やり過ぎるくらいで丁度良い」なんて思っていましたからね。よく考えて見りゃ、踊りとか唄もみんなそうですからね。

 

― 高座上で偉そうな感じに振る舞う真打さんもいるとは思うんですけどね。

 

師匠曰く「お前ぐらい(の腕前・レベル)では偉そうだ」ということなんでしょうね。腕の立つ人は偉そうには思えても、そこが「個性・魅力」であり、お客さんも「そこが見たい・そこに惹かれる」ってことなんでしょうから。そういう人たちは天才なんですよ。要は「天才の真似してたってダメよ」ってことですかね。私には私のやり方がきっとあるんでしょうね。

 


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。小太郎さんの素顔、そして本音。

 

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