柳家小太郎 独占インタビュー(4)

「落語の悩みは高座の上でしか解決はできない。」

― ご自身、さん喬師匠との関係で言うと、なにか変化・成長はありますか?昔は言われなかったことを言われ始めた、褒められることが増えた、などありますか。

 

2年前と、師匠との関係性は変わりないですね。師匠が好きで入って、相変わらず好きですし、自分がこのようにぶれるタイプなので、師匠と話すと(ぶれていても)ちゃんと一回戻ってこれるというか。常に立ち返る基準と言うか。

 

― (落語家としての)悩みを相談したりなどは?

 

もちろん、相談すれば師匠は答えてくれる、教えていただけるとは思いますが、私自身が人に(悩みを)相談するタイプではないので。友達にも仲間にも、そういうのができないタイプですので。こればっかりは自分で悩んで自分で答えを出して、自分で腹落ちしないといけないことだと思います。師匠に聞くと言うよりも、師匠の立ち居・振る舞い、背中を見て答えにするというか。

 

― 解決のルーティンというか、小太郎さんならではの解決法なんというのはあるのですか?

 

ないです。あったら、こんなに悩みません(苦笑)。結局は、やっぱり、高座の上でしか解決、解消はできないんじゃないでしょうか。ストレスの解消として、高座でウケるというのは気持ちが良いものですよ(笑)

 

― 最近影響を受けている人などいますか

 

定期的に一緒にやっている仲間からは常に刺激を受けていますね。あとはプロレス。

 

― 最近はどの試合を観に行ったんですか?プロレス

 

大日本プロレス(※)の試合、デスマッチですね。素晴らしくて感動して、ずっと泣いてました(笑)。

 

― デスマッチと言えば過激なイメージです。どこに、そこまで感激・感動したのですか?

 

選手たちはプロレス界で生き延びるために手を変え品を変え、いろんなことをやってくるわけです。その一生懸命さ、覚悟、ひたむきさに心を打たれるんです。もう、彼らの気持ちがこっち側にビンビン伝わってくるんです。しびれます。あとは、メキシコのルチャ(※)とか。

 

大日本プロレス:デスマッチを感動を生む試合に昇華させ、その一方で技・肉体による真っ向勝負スタイルのストロングBJを確立。両極に位置するプロレスを両立させた話題の団体。

※ ルチャ:ルチャリブレ(Lucha Libre)。スペイン語でプロレスのこと。一般的にメキシカンスタイルのプロレスのことをルチャリブレと呼びます。メキシカンスタイル(特長)はマスクマンが多く、軽快で機敏な技の応酬が人気など

 

「言葉って消えるからいい。昔のインタビューは消してほしい。」

― いま、変わりたいことは?

 

家。引っ越ししたい。

 

― 逆に変わりたくないこと。

 

家。引っ越ししたくない。面倒で(笑)。もう今の部屋に13年くらい住んでいますからね。いい加減引越ししたいんですけどね。家を探す、契約する。もう全部面倒くさい(笑)。どうなっちゃうんでしょうね(笑)

 

― やってくれる人がいたらいい?

 

それはそれで、全部やられるとイヤなんですよね(笑)。天邪鬼(笑)。

 

― 2年前は落語を怖いと。

 

え?そんなことを!俺、かっこいい(笑)。今でも怖いですよ。ただ、ほんの少し前よりは落語と仲良くなれたのかなと思います。楽しいなぁインタビュー。自分のことが良くわかる。客観視できる。

 

― 前回、「ネットの中に自分のインタビュー記事がいつまでも残っているのは嫌だ」と。

 

これはもう今でもいやだ。すぐにでも失くして欲しい。

 

― どこがいやですか?

 

言葉って消えるからいい、って思うので。昔と違う、昔のままの自分の考えとかがいつまでもネットの中に残っているのが嫌なんですよ。でも、まぁ、時代だから、しようがないんですかね。CDとかDVDとか出す人もいっぱいいますけど、同じような感覚を持つんだと思いますよ。「(今と違う)昔の高座の音声だ・映像だ。いやだな」って。

 

― 小太郎さんのその考えは何というか非常に「落語的」ですね。その生の、その一瞬一瞬が楽しい、刹那的と言うか。「いま」を楽しみに来てほしいと言うか。

 

消えるからこそいい。一期一会なイメージというか。だから、本を書いて残す人も凄いと思います。

 

― 前回おっしゃっていた小太郎さんの考える一流の落語家像(※)に、着々と近づいているのではないですか?

 

いや、大変ですよ。10~15分て。他の人を目当てに来ているお客さんを、自分を知らないお客さんをぱーっと出て行って10~15分で笑わせて(楽屋に)帰ってくる。これができたら超かっこいい。まだまだです。一番勉強しなきゃなと思っている点です。高座数が多い人ほど、そういう勉強ができますしね。

 

※ 小太郎さんが考える「一流の落語家/理想の噺家」:寄席に出てて、短い噺がおもしろくて、ほんの10~15分の時間でも、お客さんをちゃんと「わー」っと湧かせる、笑わすことのできる人。それが理想。(前回のインタビューより

 

― 今後の計画は?

 

9月にすぐ上の兄弟子が真打ちになります(喬の字さん)。そうなると「もう自分も。もうそろそろだぞ」と。そんな気持ちになります。そうなることを考えて過ごさなきゃなと。具体的にはお客さんを増やさないといけないなと。

 

「これを読んでいる人にお願いがあります。何かいい亭号・名前があったら教えてください。」

― 真打昇進時、小太郎という名前からの改名について。

 

時折考えてはいるんですが、いっこうにこれだ!という名が浮かばない。なので、最近では「柳家」でなくてもいいかなとも思っています。柳家大好きですけども。

 

― 柳亭とか?

 

いや、柳亭でも柳家でもなく。全然ちがう亭号でも。

 

― 金原亭系なのに「五街道」とか「桃月庵」的な?(※)

 

わかりやすく例えればそういうことです。ひとつの候補としてあり得るかなという。掘り起こしてもいいなと。なので、これを読んでいる人にお願いがあります。「何かいい亭号・名前があったら教えてください(編集部注:柳家系統で、古い名前で掘り起こせる名前、眠っている・空いている名前と言う意味。新しく考えてくださいと言う意味ではありません)」と。

 

― 2020~21年ころには、という可能性ですよね。

 

可能性としては。いやぁ、あっという間、すぐですよ。まいった、まいった(笑)。やっぱり真打になるのが一番怖いですよ。

 

※ 金原亭系なのに「五街道」とか「桃月庵」:五街道雲助師匠の師匠は、10代目金原亭馬生(きんげんてい・ばしょう)。二ツ目に昇進する時に、師匠が付けてくれた名前、六代目「五街道雲助」を襲名。雲助一門は真打になるとなぜか全員改名することでも有名。桃月庵白酒(とうげつあん・はくしゅ)、隅田川馬石(すみだがわ・ばせき)、蜃気楼龍玉(しんきろう・りゅうぎょく)。なお、金原亭自体、昔から非常にバラエティに富んだ亭号がいくつも存在する。例えば「むかし家」「鈴の家」「吉原」「五街道」「初音家」「天乃家」「蝶花楼」など、これら全て金原亭。

 

― 最後に「くがらく」においでになる、ここを読んでいる方にメッセージをお願いします。

 

くがらく二回目の出演ですから、前回来てくだすった方にも来て欲しいですし、新しい方にも来ていただきたい。この2年の間に自分を好きになってくれた方にも来ていただきたい。「とうとう独り」をはじめ、一人の会も定期的にやっているので、そっちにも来てください。吉原の花魁じゃないですけど、裏を返して(※)、はじめて一見(いちげん)さんじゃなくなる。ぜひともおいでください。

 

※ 裏を返す:二回目に遊びに来ること。本来は初めて遊んだ遊女をもう一度呼んで遊ぶこと。ちなみに三回目に遊びにきたら、そのお客さんは「なじみ」となります。

 


<あとがき>

 

前回もそうでしたが、「全部言う。けど、書かないで。」が最も多かったのが小太郎さん。とっつきにくさと人懐っこさと、大胆さと繊細さが同居している気鋭の二つ目。

 

真面目で、“マジ”で、気配りの人で、取材する側としては割と緊張するタイプ。距離感がとりにくい。もちろん、それはいやなことではなく。むしろ、こちらとしても臨むところだ!ってな感じでもあるのですが。

 

ちょっと前の、元テレビ東京アナウンサー大橋 未歩さんのツイッターにこんなのがありました。イチロー選手の引退に際してのつぶやき。

 

イチロー選手を取材した中で最も印象に残っている言葉

 

「なんでも目に見えるものなんて知れてるんですよ。頑張ってるように見えるやつの頑張りなんて知れてる。悲しそうにしてるやつの悲しみなんて知れてる。本当に悲しいやつは、それを見せないからね」

 

今後も生きる指針です。有難うございました、

 

 

プロ、一流の人の言葉。これを読んだ時、小太郎さんにも同様の姿勢を感じました。(どちらも坊主頭ですし!)

 

プライベートも稽古もお客さんには見えなくていい。高座の姿だけ見てくれればOK、というようなスタンスと身構え。おかしな質問にはおかしいと言い、言葉を選び、適当には答えない。ストイックさと真剣な覚悟。まるで修行僧。(坊主頭ですし!)

 

こんなことを書くと「余計なコトは書かないで!お客さんを楽しませることができれば、それでいいんですから。」と指摘されそうですけど。書きますね(笑)。

 

いつでも真剣に笑わせに演ってくる、楽しませに演ってくるのが小太郎流。落語を愛し、落語に愛された男。

 

みなさん、6月のくがらく。笑う覚悟で、おいでください。

 

(インタビュー&撮影:2019年3月吉日)

取材・構成・文:三浦琢揚(株式会社ミウラ・リ・デザイン


チラシ掲載の文章は、インタビュー記録からの抜粋です。全文は、ここでしか読めません。ぜひ、読んで感じて知ってください。小太郎さんの素顔、そして本音。

 

柳家小太郎 独占インタビュー(1)

柳家小太郎 独占インタビュー(2)

柳家小太郎 独占インタビュー(3)

 

プレゼントあり!「くがらクイズ」 小太郎篇